PRESSRELEASE プレスリリース

第19052号

注目を集める“スマート農業”関連の市場を調査
−2030年予測(2018年比)−
スマート農業関連市場1,074億円(53.9%増)、農業用ドローン65億円(5.4倍) 

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、変革が期待される農業において、スマート化につながるモニタリング・センシング・ロボット・AI・IoTなどの各種先進テクノロジーを用いた生産施設・プラントや装置/システム/サービスの関連市場を調査した。その結果を「農林水産ビジネスの最前線と将来展望 2019」にまとめた。

この調査では、農業をはじめ、水産業、畜産業においてもスマート化につながる施設・プラント/機器・デバイス/サービスの国内市場を調査した。また、今後の市場性が期待される先駆的な事業展開・研究開発を進める企業・団体の取り組み事例(52事例)を取り上げている。

◆調査結果の概要

スマート農業、水産業、畜産業関連の国内市場



農業や水産業、畜産業のスマート化につながる機器/システム、サービスを対象としている。スマート農業関連市場は、完全人工光型植物工場や植物育成用光源、栽培環境モニタリングシステム、農業用ロボットやドローンなどが、好調に伸びている。

スマート水産業関連市場は、陸上養殖システムや沖合養殖システム、養殖・漁業環境モニタリングシステムが伸びている。陸上養殖システムは、これまで地域活性化に向けた小規模な取り組みが中心だったが、近年、大手水産会社などの参入によって養殖システムの大規模化が進み、伸びている。2020年頃から商用プラントの本格稼働が予定されており、今後も伸びが期待される。また現在、実証実験が進められている沖合養殖システムは、今後高い伸びが期待される。沖合養殖システムは、これまでは波浪や潮流の影響で養殖できなかった沖合に生簀を設置する養殖方法で、新海域での養殖が可能になるといったメリットから注目度が高まっている。沖合養殖システムは、大規模施設を前提としており、1件当たり数億円規模になるため沖合養殖事業者の参入が本格化すれば急激な伸びが期待される。養殖・漁業モニタリングシステムは、漁業者の作業効率化、それに伴い燃料費や人件費などのコスト削減にもつながるとして漁協などで実証実験や製品化が進んでいる。また、高齢化が進む中で若手漁業者を増やすためにも経験の少なさをサポートするこのシステムは注目を集めており、今後の伸びが期待される。

スマート畜産業関連市場は、閉鎖型畜舎システムや搾乳ロボット、家畜モニタリングシステムなどが伸びている。閉鎖型畜舎システムは、牛舎向けのシステムが注目されており、乳牛を中心に採用が増加している。また、搾乳量の増加や受胎率の向上といった効果が期待されている。ロボットは、畜産酪農家の収益力向上に向けた畜産クラスター事業による補助金を受け伸びている。飼養戸数が減少している一方で、一戸当たりの飼養頭数や飼養羽数は増加しており、大規模畜舎における作業の省力化・省人化に向けて需要が増加している。家畜モニタリングシステムは、酪農家・畜産農家の負担や農場経営のリスクを軽減することが可能となるほか、外国人実習生や経験の浅い酪農家・畜産農家をサポートし、育成にもつながるシステムとして注目されており、今後の伸びが期待される。

◆注目市場

1.農業用ドローン/農業用ドローン活用サービス

2019年見込
2018年比
2030年予測
2018年比
農業用ドローン
23億円
191.7%
65億円
5.4倍
農業用ドローン
活用サービス
4億円
2.0倍
50億円
25.0倍

農業用ドローン市場は、農薬・肥料散布を目的とした導入が広がっており、従来のラジコンヘリより安価であることや小規模農地でも利用できることから拡大している。今後は、自動航行型のドローン使用や目視外飛行、機体やオペレーターの認定手続き、使用できる農薬の登録や適用拡大の手続きなどの規制緩和が順次進む見通しである。さらには農水省が策定する安全性確保ガイドラインの浸透による安全面での課題解消や、メーカー間の競争の激化による低価格化が進むことで、さらなる普及の加速が期待され、市場は拡大するとみられる。

農業用ドローン活用サービス市場は、農薬・肥料散布代行サービスが中心である。現在、ドローンによる農薬・肥料散布に興味を持つ生産者は、自らオペレーター講習を受けて認定を取得し実施するケースが多いが、今後ドローンによる農薬・肥料散布の有用性への評価が高まれば、ドローンを所有するのではなく低コストでオペレーションの負担を軽減しつつも、農業用ドローンを活用できる農薬・肥料散布代行サービスの利用も増加するとみられる。また今後、ドローン本体の高機能化や搭載するカメラの高機能化、環境モニタリングシステムなど周辺システムとの連携やAI活用などによる分析技術の高度化が進むことで、ドローンでの圃場空撮画像をもとにした圃場管理サービスや生育診断サービス、農薬散布を組み合わせたピンポイントでの病害防除サービスなどが伸び、市場の拡大が予想される。

2.完全人工光型植物工場

2019年見込
2018年比
2030年予測
2018年比
市場規模
125億円
105.9%
163億円
138.1%

完全人工光型植物工場市場は、地震や台風などの災害や、長雨、異常な猛暑や寒冬の影響で露地物の価格が乱高下し品質や供給が不安定になることが多くなっているなか、安定生産が可能な植物工場に注目が集まり、拡大している。特に、安定した調達を必要とする中食や外食などの業務・加工事業者では、植物工場産野菜を調達先の一つとして選択することが増えており、市場の拡大に寄与している。これまで販売先のメインであった小売り向けが飽和状態にある中で、栽培事業者はレタスの大玉化など、業務・加工向けのニーズに合わせた栽培技術の確立を進めているほか、自家消費目的で自ら生産事業に取り組む中食・外食事業者も増えてきており、今後の市場の活性化が期待される。

3.陸上養殖システム

2019年見込
2018年比
2030年予測
2018年比
市場規模
12億円
109.1%
28億円
2.5倍

陸上養殖システム市場は、海水温度の上昇や台風・赤潮の発生といった環境の変化や自然災害の影響を受けないことや養殖プラントの設置場所を選ばないことから注目されている。近年は、大手水産会社の参入や地域活性化政策の一環として取り組みが増加しており、市場は拡大している。養殖魚種が多様化していることや、養殖規模が徐々に拡大していることから、今後も市場の伸びが続くとみられる。また、これまで養殖事業を手掛けていた企業による養殖システムの外販や、実証実験中の企業が事業化を計画していることなどから参入企業の増加が予想される。

4.家畜モニタリングシステム

2019年見込
2018年比
2030年予測
2018年比
市場規模
18億円
112.5%
56億円
3.5倍

家畜モニタリングシステム市場は、酪農家・畜産農家にとって重要な作業(発情検知、分娩監視、健康状態・疫病監視)をサポートするシステムとして普及が進み、拡大している。特に、中・大規模畜産農家や酪農家は、飼養頭数が多いため管理や作業負担の軽減ニーズが高く、投資力もあることから、システムの導入が進んでいる。一方、小規模酪農家・畜産農家においても飼養牛の高齢化が進み、事故の際の農場経営へのダメージも大きいことから管理や作業負担の軽減ニーズは高まっており、比較的安価なシステムも登場しているため徐々に導入例が増えてきている。今後は、価格の低下や、計測したバイタルデータの分析精度の向上などにより、さらに普及が進むとみられる。

◆調査対象

注目施設・プラント/機器・デバイス/サービス

農業 完全人工光型植物工場、養液栽培プラント、ガラス/フィルムハウス、栽培環境制御装置、灌水/給液管理装置、栽培環境モニタリングシステム、栽培用空調機器、植物育成用光源、水田水管理システム、GNSSガイダンスシステム/自動操舵システム、農業用ロボット、農業用ドローン/ドローン活用サービス、生産管理システム、品質評価装置
水産業 陸上養殖システム、沖合養殖システム、養殖・漁業環境モニタリングシステム、水産用水温調節機器、水産用紫外線殺菌装置
畜産業 閉鎖型畜舎システム、家畜モニタリングシステム、畜産用空調機器、畜産用光源、搾乳ロボット、餌寄せロボット

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。


2019/07/23
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