PRESSRELEASE プレスリリース
■住設建材 3兆8,177億円(10.3%減)/住生活サービス 4兆1,861億円(40.9%増)
2019年度の新設住宅着工戸数は、国土交通省の建築着工統計調査によると2018年度比7.2%減の88.4万戸だった。2020年度は緊急事態宣言の発令や企業活動の自粛、急速な景況感の悪化による消費マインドの減退により、2019年度比12.1%減の77.7万戸が見込まれる。
2020年度内に新型コロナウイルス感染症がある程度収束すれば、2021年度は戸建住宅で一時的な増加が予想される。しかし、少子高齢化や人口減少は変わらず続いていくことや、分譲マンションを中心に新築より割安な大規模リノベーション物件の増加などから、2021年度以降も新設住宅着工戸数の減少が続き、2030年度には62.0万戸が予測される。
◆調査結果の概要
■住設建材&住生活サービス市場
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2019年度見込 |
2018年度比 |
2030年度予測 |
2018年度比 |
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住設建材 |
4兆2,680億円 |
100.3% |
3兆8,177億円 |
89.7% |
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建材 |
1兆4,392億円 |
99.8% |
1兆1,046億円 |
76.6% |
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設備・家電 |
2兆8,288億円 |
100.6% |
2兆7,131億円 |
96.5% |
住生活サービス |
3兆1,019億円 |
104.4% |
4兆1,861億円 |
140.9% |
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合 計 |
7兆3,700億円 |
102.0% |
8兆 37億円 |
110.8% |
※市場データは四捨五入している
2019年度の市場は建材が微減し、設備・家電や住生活サービスは拡大するとみられるが、長期的には新設住宅着工戸数の減少により、建材や設備・家電は縮小が予想される。
共働き世帯や単身世帯、高齢者世帯の増加、テレワークの増加など、暮らし方や働き方が多様化する中で、住宅に求められる機能が増え、高度化している。そのため、建材や設備・家電のモノ売りだけでなくIoTの活用や住生活サービスとの連携により、快適な暮らしを提案するコト売りへ市場は変化していくとみられる。
たとえば調理家電を利用するレシピの配信と食材配達サービスの連動、スマートフォンによる玄関ドアや窓シャッターの遠隔操作、給湯器などの使用状況と連動した高齢者の見守りなど、サービス展開まで視野に入れた製品の開発が重要となっている。
【建材】 短期的にはリフォームやリノベーション需要の減退懸念、長期的には新設住宅着工戸数減少により縮小
2019年度は消費税増税前の駆け込み需要により多くの品目が横ばいから微減にとどまっている。短期的には景況感が悪化することで、不急のリフォームやリノベーション需要の減退が懸念され、長期的には新築向けが多いことから、新設住宅着工戸数の減少により市場の縮小が予想される。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり抗菌加工された製品の需要が増しているほか、ペット対応や幼児、高齢者対応の製品、ZEHへの対応など、本来の機能やデザインにさらなる要素を追加し、個人のニーズにあわせた製品の開発が加速していくとみられる。
【設備・家電】 新設住宅着工戸数の減少で縮小も、エネルギーやIoT関連製品が拡大し、縮小は限定的
2019年度の市場は駆け込み需要によりわずかながら拡大するものの、2020年2月には新型コロナウイルス感染症の影響により、中国で生産する製品や部品の供給が停止したことで、水廻り設備や水廻り関連機器は納期遅れなどがみられた。2020年度に入り納期遅れは解消されているものの、新設住宅着工戸数の減少により多くの品目で落ち込みが予想される。長期的にはエネルギー関連製品やIoT関連製品が拡大することで、建材市場に比べ落ち込みが少ないとみられる。
エネルギー関連製品は、補助金や相次ぐ災害などを背景に、定置型蓄電システム、燃料電池、V2Hなどが低価格化と共に普及すると期待される。また、エネルギー制御や遠隔操作、家事の自動化などを目的に、住宅用電気錠や掃除ロボット、自動調理家電などのIoT化された家電や設備、それらのプラットフォームとなるHEMSやスマートスピーカーなども伸びが予想される。
【住生活サービス】 モノ売り単独からコト売りとのミックスへ、変化を見据え住設建材メーカーの参入続く
配食サービス以外は黎明期や成長期の品目が多い。近年、調理家電や照明、空調など家電メーカー、トイレや給湯器などの設備メーカーといった多様なメーカーが参入している。これらのメーカーはサービス単体で収益を確保できているわけではないが、機能やデザインによる差別化が難しくなる中で、サービスをフックとした顧客の取り込み、長期的な顧客との関係性構築、顧客当たりの単価上昇を狙っている。
また、車や家の所有から、自身のライフスタイルの変化に合わせて利用するシェアリングサービスやサブスクリプションサービスが注目されている。短期的には不特定多数の利用者を想定したサービスは需要の停滞が想定されるが、長期的には住宅の在り方の多様化が進むことで、拡大が期待される。
◆注目市場
●住宅用電気錠
2019年度見込 |
2018年度比 |
2030年度予測 |
2018年度比 |
57億円 |
103.6% |
70億円 |
127.3% |
電気錠は電気信号で錠前の施解錠を行うものである。
現状では、シリンダー錠など手動の錠前が主体であるものの、大手玄関ドアメーカーが電気錠の標準採用やオプション採用を進めたことで、新築戸建住宅を中心に普及しつつある。また、低コストで導入できる製品も投入されており、入居者の入れ替え時の鍵交換が不要なことから、賃貸集合住宅でも採用が増えている。
市場は2019年度に2018年度比3.6%増の57億円が見込まれる。2020年度は新設住宅着工戸数の大幅な減少により市場は縮小するとみられるが、2021年度以降は再び拡大し、2030年度には2018年度比27.3%増の70億円が予測される。
スマートフォンなどで外出先からの施錠確認や閉め忘れ時の施錠、家族の外出通知などを行うIoT対応システムが開発されている。現状はオプションであることが多いが、今後は標準採用が進んでいき、2030年度にはIoT対応比率が50%まで上昇するとみられる。また、電気錠の合鍵共有機能により不在時でもクリーニングや食品の宅配サービス、家事や買い物の代行サービスを受けることが可能なことから、住生活サービスとの連携が進むとみられる。
◆ウィズコロナ/アフターコロナの住宅の新常態
新型コロナウイルス感染症の影響により、住宅での滞在時間が増加し、住宅に求められる役割や機能が増えている。これにより、以前から注目されていた高付加価値住宅や住宅設備、住生活サービスの普及が進むことが期待される。また、生活様式の変化により、①コクーン・シェルター化、②コネクティッド化、③フレキシブル化が住宅の新常態としてあげられている。
①コクーン・シェルター化
巣ごもりや在宅生活に対応するなど空間の質的向上をはかった住環境である。エネルギーの自給自足や、リモート技術の活用による在宅勤務に対応した住環境(職住融合)、さらには在宅介護・在宅医療に対応した住環境(医・職・住融合)、などがあげられる。こういった住環境を整えやすくするための設備や機器の多機能化や高付加価値化、さらには住生活サービスの活用も期待される。
②コネクティッド化
リモート技術やIoT技術の広がりにより、住宅の設備などあらゆるモノが繋がった住環境である。生活データの取得やサービス連携の中核を担うことから、コクーン・シェルター化やフレキシブル化の要となりうるとみられる。
③フレキシブル化
柔軟性や流動性の高い住環境である。新築住宅だけでなく既築・中古・空き家住宅のリフォームやリノベーション、スケルトン・インフィル住宅の増加、所有だけでないシェアリングやサブスクリプションサービスなどの増加が想定される。
◆調査対象
建材 |
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・フローリング材 |
・サッシ |
・窓シャッター |
・室内ドア |
・エクステリア |
・サイディング材(窯業系、金属系) |
・収納部材 |
(門扉、フェンス、カーポート) |
・薄型平板瓦(新生瓦) |
・階段ユニット |
・玄関ドア |
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設備・家電 |
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・キッチン |
・レンジフード |
・V2H |
・洗面化粧台 |
・浴室暖房乾燥機 |
・テレビドアホン |
・浴室ユニット |
・ルームエアコン |
・家庭用見守りカメラ |
・温水洗浄便座/一体型温水洗浄便器 |
・照明器具 |
・住宅用電気錠 |
・水栓金具 |
・HEMS |
・掃除ロボット |
・浄水器 |
・住宅用太陽光発電システム |
・スマートスピーカー |
・ビルトインコンロ |
・家庭用定置型蓄電システム |
・自動調理家電 |
・家庭用給湯器 |
・家庭用燃料電池 |
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住生活サービス |
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・ハウスクリーニング |
・睡眠管理サービス |
・コリビングサービス |
・家事代行サービス |
・高齢者見守りサービス |
(サブスクリプション住宅) |
・ヘルスケアサービス |
・ホームセキュリティサービス |
・家電・家具サブスクリプション |
・配食サービス |
・カーシェアリングサービス |
サービス |