PRESSRELEASE プレスリリース

第20114号

オール電化、ZEH、コネクテッド住宅市場を調査
―2030年度市場予測(2019年度比)―
■オール電化住宅   25.3万戸(14.2%減)新築住宅の着工戸数減少で縮小も、採用率は増加
■ZEH住宅   16.0万戸(2.3倍) 新築戸建中心に、注文住宅に加え分譲住宅でも採用増
■コネクテッド住宅 180.0万戸(29.0倍) 家庭内のデータを活用したサービス登場に期待

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、新築住宅の減少から既築を対象としたビジネスへの転換が進む住宅市場、差別化や顧客の囲い込みの一環として採用が進むオール電化、ZEH、コネクテッド住宅などの普及動向を調査した。その結果を「2020年版 住宅マーケット別建築・機器・サービス市場調査」にまとめた。

この調査では、戸建住宅、分譲マンション、賃貸アパートの3セグメントにおけるエリア別の新築・既築住宅市場、注目コンセプト住宅の普及動向、さらには住宅に関わる様々な事業者のAI・IoTや住生活サービスへの取組み状況なども捉えた。

2020年度の住宅業界では、新型コロナウイルス感染症への警戒などから、施工休止や営業展開の自粛、販促イベントの中止などがみられた。また、需要面でも景況感の悪化により住宅の購入に慎重になる消費者心理もみられ、新築住宅の着工戸数は2019年度比12.1%減の77.7万戸と大幅な減少が見込まれる。

少子高齢化や人口減少に加え、今後は世帯数の減少が予想されることや、新築より割安な買取再販物件(中古住宅をリフォーム・リノベーション後に販売)の増加などから、2021年度以降も減少が続き、2030年度には62.1万戸が予測される。

◆調査結果の概要:フロー(単年)

■オール電化住宅市場

2020年度見込

2019年度比

2030年度予測

2019年度比

27.1万戸

91.9%

25.3万戸

85.8%

給湯、調理、冷暖房に使用するエネルギーを全て電気で賄う住宅を対象とする。

オール電化住宅は一般家庭の熱源転換と電力使用量の増加、夜間電力の需要確保などを目的に電力会社が普及を進めていた。東日本大震災以降、電力会社によるPRの自粛やハウスメーカー、デベロッパー、リフォーム事業者などのサブユーザーへの営業支援減少などにより市場の縮小は続いたが、原子力発電所の再稼働とオール電化営業の再開などにより下げ止まりつつある。また、電力小売全面自由化により、顧客の離脱が続く電力会社が販売電力量の増加や顧客囲い込みの一環として、脱炭素やZEHと合わせて提案する動きがみられる。

戸建住宅が9割以上を占め、その中でも新築の比率が高い。集合住宅では、熱源機器の設置スペースの制約と都市ガス事業者による営業攻勢などもあり採用は限定的である。また、エリア別にみると、北陸、中国、四国、九州では新築戸建住宅での採用が7割を超えている。また、ガス小売全面自由化を受けて、ガス小売りに参入する電力会社は、都市ガスエリアで電力とガスのセット提案を進めており、オール電化提案が手薄となるエリアもみられる。

2020年度は新築住宅の着工戸数の減少により縮小し、長期的にも減少が加速することで、オール電化住宅市場は縮小していくとみられる。しかし、ZEHなどと合わせた提案強化、電力会社による希薄化していたサブユーザーへの営業支援の再構築などにより、新築住宅の着工戸数に対するオール電化の採用率は上昇していくと予想される。

■ZEH住宅市場

2020年度見込

2019年度比

2030年度予測

2019年度比

7.2万戸

102.9%

16.0万戸

2.3倍

室内環境の質を維持しながら断熱性能の向上などにより大幅な省エネルギーを実現し、再生可能エネルギーの導入により一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅であり、達成レベルによりいくつかの等級に分類される。今回は、再生可能エネルギーを導入するZEH住宅を対象とし、再生可能エネルギーを導入しないZEH Orientedは含まない。

太陽光発電の導入メリットが大きい戸建住宅でZEH化が進んでおり、特に大手ハウスメーカーが先行して新築時の提案を進めている。既築住宅では太陽光発電やHEMSの導入に加え、断熱など大規模改修が必要となることから採用は限定的である。このほか、賃貸アパートでは一部で採用が進んでいるものの建築費用を抑えたいオーナーニーズが強く、また、分譲マンションで採用が進んでいるのはZEH Oriented(調査対象外)であることから、需要の中心は新築の戸建住宅である。

今後は中堅ハウスメーカーでも取扱いが増え、注文住宅だけでなく分譲住宅での採用も予想される。2030年度の新築住宅の着工戸数に対するZEHの採用率は26%とみられ、戸建住宅に限れば46%が予測される。エリア別には、大手ハウスメーカーのシェアが高い中部、関東、関西、九州を中心に普及していくとみられる。

■コネクテッド住宅市場

2020年度見込

2019年度比

2030年度予測

2019年度比

8.0万戸

129.0%

180.0万戸

29.0倍

HEMSを活用したIoT住宅とは異なり、有料のIoTプラットフォームを活用することでより簡易・安価に住生活サービスを受けられるコネクテッド住宅を対象とする。

2018年度頃から市場が形成されており、セキュリティシステムやエネルギーの見える化といった需要を獲得している。展開サービスとしてはこれらのほか、家電操作やスマートロックなどがある。採用は既築住宅を中心に進んでいる。また、戸建住宅が6割近く占めるが、都市部の分譲マンションでも需要が期待されるほか、賃貸アパートでは差別化の一環で入居者向けサービスとして採用されている。

今後は家庭内データを活用した新たなサービスの登場が期待され、暮らしサービスの提案や情報販売サービス、広告ビジネスなどが候補として挙げられる。

◆普及動向:ストック(累計)

■オール電化、ZEH、コネクテッド住宅

 

2020年度見込

2019年度比

2030年度予測

2019年度比

オール電化住宅

764.5万戸

103.5%

1,012.7万戸

137.1%

ZEH住宅

32.3万戸

128.7%

159.3万戸

6.3倍

コネクテッド住宅

16.0万戸

2.0倍

1,000.0万戸

125.0倍

オール電化住宅は、東日本大震災以降純増数の鈍化がみられるが、堅調に増加しており2020年度には2011年度から5割程度増え764.5万戸が見込まれる。2030年度にはオール電化住宅の累計が1,000万戸を突破し、普及率も19%が予測される。なお、都市ガス併用住宅は都市部を中心とした人口流入や賃貸アパートの増加などにより拡大が続き2,752万戸、LPG・灯油併用住宅は他熱源への転換、都市部への人口流出などにより1,500万戸を下回るとみられる。

ZEH住宅は、低炭素社会実現に向けたZEH化の政策支援に加え、新築市場が縮小する中での生き残り、他社との差別化を図るためZEH住宅を手掛ける事業者は増加していくとみられ、2030年には159.3万戸が予測される。

コネクテッド住宅は、IoTプラットフォームを利用する住生活サービスが増えることで市場の広がりが期待され、2030年度には1,000万戸の住宅で普及が進むとみられる。

◆調査対象

新築/既築市場

・戸建住宅

・分譲マンション

・賃貸アパート

注目コンセプト住宅

・オール電化住宅

・ZEH住宅

・コネクテッド住宅

業界別動向

・戸建住宅事業者

・買取再販事業者

・旧一般ガス事業者

・マンションデベロッパー

・不動産仲介事業者

・LPガス事業者

・賃貸アパート事業者

・不動産情報サイト事業者

・通信事業者

・リフォーム事業者

・旧一般電気事業者

 


2020/11/04
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