PRESSRELEASE プレスリリース
2020年見込 27兆6,820億円(前年比21.3%減)
2030年予測 40兆9,828億円(2019年比16.6%増)
<注目市場>
●インホイールモーター 2030年予測 4,485億円
~実証実験や研究開発が活発で、2022年頃から市場拡大に期待~
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 田中 一志 03-3664-5839)は、従来の自動車に対するニーズや課題の解決に加え、CASE対応、さらには非接触技術の開発・応用や車室空間を十分に確保した車両設計などウィズコロナ/ポストコロナの対応も必要となっている自動車部品の世界市場を調査した。その結果を「2021 ワールドワイド自動車部品マーケティング便覧」にまとめた。
この調査では、パワートレイン系14品目、駆動/足回り系4品目、内装系7品目、外装系5品目、計30品目の市場の現状を捉え、将来を予測した。
◆調査結果の概要
2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響による自動車工場の稼働停止や自動車販売の不振などで自動車生産台数の大幅な減少が予想される。2020年下半期には工場の稼働も再開し、需要も戻り始めていることから、2021年以降、市場は回復に向かうとみられる。
自動車は各国で環境規制が強化されており、自動車部品では軽量素材の採用や電子制御化などによる燃費向上が重要なテーマとなっている。また、電子制御化の進展による高電圧化やサーマルマネジメントへの対応も求められている。今後は、自動運転技術が高度化することで車室内ではこれまでにない過ごし方も可能となり、車室空間の快適性がさらに重視されていくため、部品やシステムが大きく変わっていくとみられる。
■自動車部品30品目の世界市場
2020年は自動車生産台数の大幅な減少により、自動車部品市場も前年比21.3%減が見込まれる。2021年以降は回復に向かい、2024年には2019年と同程度の市場規模になるとみられる。
最も規模が大きい外装系の市場は、その市場をけん引するボディ素材が軽量化などを目的に鋼板から高単価なホットスタンプ材やアルミニウム合金などへ置き換わることで、伸びるとみられる。ボディ素材に次いで規模が大きいタイヤは、新素材や新製法を用いた高機能タイヤなどの投入が進む一方で、中国や韓国メーカーの低価格タイヤの増加により微増にとどまるとみられる。
内装系市場は、車室空間の快適性の向上を目的としたシートシステムや空調の高機能化による拡大が予想される。なお、ステアリングホイールは、自動運転技術が高度化することで不要になる可能性があるものの、現時点では自動運転時はインストルメントパネル内部に格納するなどが検討されており、自動車生産台数に比例した需要が続くとみられる。
駆動/足回り系市場は、インホイールモーターが2022年頃から市場拡大が期待される。一方で、デファレンシャルギアやプロペラシャフトなどが不要となり置き換えが進むとみられる。
パワートレイン系市場は、ターボチャージャーがけん引している。内燃車の需要は2030年にかけて増加が予想されることから、内燃車に搭載される部品も緩やかながら伸びが続くとみられる。これに加え、電動化によって電動ウォーターポンプや排熱回収器などサーマルマネジメントに関連する部品が今後伸びることで、市場は大幅な拡大が期待される。
◆注目市場
●サーマルマネジメント関連
エンジン性能や燃費、航続距離やバッテリー寿命などの向上を目的に、発生する熱や冷却するための水を効率よく制御するのがサーマルマネジメントである。部品としては、エンジン冷却モジュール、電動ウォーターポンプ、排熱回収器があげられ、現在排熱として処理されている熱エネルギーの再利用に向けた部品などが注目される。
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2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
エンジン冷却モジュール |
6,571億円 |
79.0% |
8,686億円 |
104.4% |
電動ウォーターポンプ (エンジン冷却用) |
170億円 |
93.9% |
1,492億円 |
8.2倍 |
電動ウォーターポンプ (インバーター/バッテリー冷却用) |
254億円 |
76.7% |
1,599億円 |
4.8倍 |
排熱回収器 |
74億円 |
69.8% |
624億円 |
5.9倍 |
【エンジン冷却モジュール】
エンジンの冷却水などを冷やすラジエーター、電動ファン、コンデンサーが一体となった熱交換器を対象とし、ラジエーター単体製品は含まない。
一部の地域や低価格車向けで、ラジエーター単体での納入が残るものの、内燃車には必要な部品であり、自動車生産台数に近い需要の増減がみられる。将来的にはEVの普及で搭載機会が減少していくものの、2030年にかけては、ラジエーター単体製品からエンジン冷却モジュールへのシフトにより市場は拡大が予想される。
【電動ウォーターポンプ】
電子制御によって冷却水を循環させる部品である。冷却する部品はさまざまであるが、エンジン冷却用とインバーター/バッテリー冷却用を対象とした。
内燃車では機械式のウォーターポンプが主流であるが、ウォーターポンプを電動化することで、暖機時間の短縮による燃費や排ガス性能の向上が可能となる。しかし、新たな電源が必要なことから環境自動車での搭載が中心である。
エンジン冷却用は、2020年は欧州や中国での48VマイルドHV向けが増加したことで、市場の縮小は小幅にとどまるとみられる。インバーター/バッテリー冷却用は、大型バッテリーを搭載するPHVやEVを中心とした需要であり、2020年はPHVやEVの落ち込みに比例して縮小するとみられるが、長期的には市場拡大が予想される。
【排熱回収器】
排ガスから熱を回収しエンジン冷却水を温める部品である。排熱回収器の利用によりエンジンの暖機時間を短くすることで寒冷時の燃費や暖房効率の向上が可能となる。
HVやPHVではEV走行中でも暖房のためにエンジンを作動する必要があるため、燃費が悪くなりがちである。そのため、燃費への影響がなく暖房熱を供給できる排熱回収器の搭載が、寒冷地仕様のHVやPHVで進んでいる。搭載台数の増加により低価格化していることから、HVやPHVでの搭載が広がるとともに、寒冷地仕様の内燃車でも搭載が進むとみられる。
●インホイールモーター
2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
僅少 |
― |
4,485億円 |
― |
ホイール内に内蔵した駆動用電気モーターである。四輪それぞれに装着すれば車輪ごとに独立制御が可能となり、その場旋回や横方向移動などにより、縦列駐車や狭い場所への駐車が容易になる。
中国では自動運転バスなどで実用化されており、英国や北米でも実証実験や研究開発が活発である。量産車への搭載はまだ行われておらず2020年の市場は僅少であるが、2022年頃から徐々に搭載が進むことで市場が拡大し、2030年には4,485億円が予測される。
インホイールモーターの採用によりデファレンシャルギアやプロペラシャフトなどが不要となり、車体設計の自由度が増し、車室空間を広げられることから、特に快適性が重視される自動運転車の駆動モーターとして期待される。
◆調査対象
パワートレイン系 |
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・イグニッションコイル |
・インテークマニホールド |
・EGRクーラー |
・オルタネーター/ISG・BSG |
・可変バルブユニット |
・触媒 |
・高圧サプライポンプ |
・電動ウォーターポンプ |
・PM捕集フィルター用触媒 |
・ターボチャージャー/ スーパーチャージャー |
・エンジン冷却モジュール |
・排熱回収器 |
・グリルシャッター |
・バッテリー冷却プレート |
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駆動/足回り系 |
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・トランスミッション(MT/AT) |
・プロペラシャフト |
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・デファレンシャルギア |
・インホイールモーター |
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内装系 |
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・ステアリングホイール |
・インストルメントパネル |
・高電圧PTCヒーター |
・シートシステム |
・カーエアコン |
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・エアバッグモジュール |
・電動コンプレッサー |
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外装系 |
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・ボディ素材 |
・光学ミラー/電子ミラー |
・サンルーフ |
・外装用照明 |
・タイヤ |
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