PRESSRELEASE プレスリリース
●リチウムイオン二次電池(LIB) xEV用 6兆7,403億円(2.6倍)
~EVの増産や欧州の環境規制強化などを背景に、xEV市場が拡大~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、市場をけん引する自動車分野に加えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による「リモート」「巣ごもり」で新たな需要が喚起されているリチウムイオン二次電池の世界市場を調査した。
その結果を「2020 電池関連市場実態総調査 上巻 電池セル市場編」にまとめた。
この調査では、リチウムイオン二次電池をはじめとする二次電池と一次電池、リチウムイオン二次電池主要応用製品5品目の市場を調査・分析した。また、今後発刊予定の「2020 電池関連市場実態総調査 下巻 電池材料市場編」では、リチウムイオン二次電池材料をはじめとする二次電池材料や一次電池材料の市場動向をまとめる。
◆注目市場
●リチウムイオン二次電池(LIB)の世界市場
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2020年見込 |
前年比 |
2024年予測 |
2019年比 |
xEV用 |
2兆5,916億円 |
99.4% |
6兆7,403億円 |
2.6倍 |
小型民生用 |
1兆7,154億円 |
100.3% |
1兆9,810億円 |
115.9% |
ESS/UPS/BTS用 |
4,340億円 |
118.8% |
7,990億円 |
2.2倍 |
合 計 |
4兆7,410億円 |
101.2% |
9兆5,203億円 |
2.0倍 |
【xEV用】
EV、PHV、HVの駆動用電池として用いられるLIBを対象とした。
TeslaなどによるEVの生産拡大や欧州の環境規制強化などを背景にxEV市場は拡大している。それに伴いLIB需要も大幅に増加しており、2023年には5兆円に達すると予測される。2020年はxEVの生産台数の低迷により微減するものの、各国がxEV普及の支援政策を打ち出していることから、2021年以降市場は拡大に転じるとみられる。
中国では、xEVの補助金政策の終了が2020年末に予定されており、先行して補助金額が徐々に減額されていたため、EVやPHVの販売台数が減少していたが、補助金政策は2022年末までの延長が決定したほか、NEV(New Energy Vehicle)にHVが追加されるなど、NEV規制による低燃費車への優遇措置によりxEVの需要が回復している。
米国では、カリフォルニア州に代表されるZEV規制とEV購入に対する税額控除により、xEVの需要が増えている。ZEV(Zero Emission Vehicle)とは、排出ガスを出さないEVやFCVのことで、カリフォルニア州などで適用されるZEV規制では、一定台数以上の自動車を販売するメーカーは販売台数の一定比率をZEVとすることが求められる。達成できない場合は罰則があり、EVとFCVのみで規制をクリアするのは困難であることから、PHVを組み入れることも許容されている。
欧州では、企業単位で販売車両のCO₂の排出量平均値を算出し、定められた基準以下にすることが要求され、達成できない場合は米国と同様に罰則がある。このCO₂排出規制ではxEVの車種は限定されないため、それぞれのメーカーが強みのある車種で比率を高めており、LIBの需要も伸びている。
【小型民生用(シリンダ型/角型/ラミネート型)】
ノートブックPCやスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末などコンシューマ・エレクトロニクス(CE)製品向けと充電式電動工具やガーデニングツール、E-Bikeなどモーター駆動用途向けが中心である。
CE製品向けでは、スマートフォンやウェアラブル端末、小型化が進むワイヤレスイヤホンなど幅広い製品でラミネート型が採用されており、市場拡大が続いている。ノートブックPCは従来シリンダ型が主流であったが、薄型タイプの増加に伴いラミネート型の比率が上昇している。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響によりリモートワークが増えたことからノートブックPCの需要が増加しており、伸びている。
モーター駆動用途向けでは、充電式電動工具向けとガーデニングツール向けが市場をけん引している。2020年は外出自粛を背景にガーデニングを行う人が増えたことで、ガーデニングツール向けの需要が増加している。そのほか、欧州を中心に電動アシスト自転車、中国を中心にE-Bike/Scooter向けの需要が増加しており、引き続き市場は拡大していくとみられる。
【ESS(電力貯蔵システム)/UPS(無停電電源装置)/BTS(携帯電話基地局)用】
ESSでは、競合となる鉛蓄電池と比較して長寿命かつ省スペース化が可能であり、入出力特性に優れることからLIBの採用が進んでいる。一方、UPS、BTSでは鉛蓄電池が主流である。
2019年は、デマンドチャージ対策や太陽光発電電力の自家消費、電力のピークシフト、系統安定化、アンシラリーサービスなど幅広い用途で、欧州や北米、中国においてESSの市場が拡大した。これらの地域では、今後も需要増加が期待される。
米国では、2020年からカリフォルニア州で新築住宅に太陽光発電システムの設置が義務化されており、太陽光発電併設のESSの需要が高まるとみられる。カリフォルニア州以外でも、家庭用ESSの導入補助政策が施行されており、LIBの需要増加が期待される。
欧州では、再生エネルギー導入補助金と税制優遇策により、市場拡大するとみられる。
中国では、xEVの開発が進展することで大型LIBの生産が拡大し、ESS向けのコストも下がっている。中でも、LFP(リン酸鉄リチウム)LIBは費用対効果が高く、今後ESS用LIBの主流になるとみられる。また、5G通信基地局向けのBTS、EV用充電システムとESSの統合利用やスマートシティでのESSの利用、鉄道輸送、国家電網による「変電所の多機能統合」(データセンター・5G通信基地局・衛星基地局の複数統合)など、ESSが導入されるシーンが増えている。そのため、ESS向けLIBの需要が増加している。
◆調査結果の概要
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2020年見込 |
前年比 |
2024年予測 |
2019年比 |
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二次電池 |
8兆4,159億円 |
95.4% |
13兆4,871億円 |
152.9% |
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リチウムイオン二次電池 |
4兆7,410億円 |
101.2% |
9兆5,203億円 |
2.0倍 |
一次電池 |
1兆2,035億円 |
101.4% |
1兆4,140億円 |
119.2% |
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合 計 |
9兆6,194億円 |
96.1% |
14兆9,011億円 |
148.9% |
※リチウムイオン二次電池は二次電池の内数
【二次電池】
二次電池市場はLIBを中心に拡大している。LIBの比率は年々増加しており、2024年には全体の7割に達すると予測される。中でも、xEV用が大幅に伸びており、市場をけん引している。2020年は最大の電池生産国である中国において補助金政策が後退し、EVやPHVの販売台数が減少したことや、新型コロナウイルス感染症の影響によるロックダウンで一部企業の電池生産が一時中断されたことなどから市場は前年比4.6%減の8兆4,159億円が見込まれる。2020年春以降、中国がxEV販売に関する補助金政策を延長するなど、各国がxEV普及への支援政策を打ち出しているほか、自動車以外でも「リモート」「巣ごもり」で新たな需要が喚起されており、2021年以降、市場は再び拡大するとみられる。
【一次電池】
一次電池市場はアルカリマンガン乾電池の規模が最も大きく、全体の半数以上を占める。新型コロナウイルス感染症の影響により世界各国で緊急備蓄電源として需要増加しているほか、新興国の一部や途上国ではマンガン乾電池からのシフトが続いていることから今後も市場は拡大していくとみられる。二酸化マンガンリチウム電池(コイン)や二酸化マンガンリチウム電池(シリンダ)、塩化チオニルリチウム電池はIoT 関連で需要が増加している。
◆調査対象
二次電池 |
・鉛蓄電池 |
・リチウム二次電池(コイン) |
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・ニカド電池(小型) |
・レドックスフロー電池、 |
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・ニッケル水素電池(小型) |
ナトリウム硫黄電池 |
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・ニッケル水素電池(大型) |
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リチウムイオン二次電池 |
・小型(シリンダ型/角型/ラミネート型) |
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・xEV用 |
・ESS/UPS/BTS用 |
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一次電池 |
・アルカリマンガン乾電池、マンガン乾電池 |
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・アルカリボタン電池 |
・二酸化マンガンリチウム電池 |
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・酸化銀電池 |
(シリンダ) |
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・二酸化マンガンリチウム電池 |
・塩化チオニルリチウム電池 |
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(コイン) |
・空気亜鉛電池 |
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リチウムイオン二次電池 主要応用製品 |
・ノートブックPC |
・ワイヤレスイヤホン |
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・スマートフォン |
・中国EV・PHV |
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・充電式電動工具/園芸工具 |
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