PRESSRELEASE プレスリリース

第21094号

ESS・定置用二次電池の世界市場を調査
―2035年市場予測(2020年比)―
■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池     3兆4,460億円(3.4倍)
~系統・再エネ併設用、住宅用、業務・産業用など各用途で市場が拡大~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、世界各国で脱炭素やカーボンニュートラルの実現に向けた目標が掲げられ、再生可能エネルギーの導入量が増加している一方、現時点ではその発電量の安定性が課題とされている中、課題解決のために採用が拡大しているESS・定置用で使用される二次電池の市場を調査した。その結果を 「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2021 ESS・定置用蓄電池分野編」にまとめた。

この調査では、系統・再エネ併設用、住宅用、業務・産業用蓄電システム用などのESS・定置用蓄電システム向け二次電池について、電池種や搭載容量、コスト、耐用年数などを踏まえ用途別のトレンドを整理し、エリア別に世界市場の現状を調査、将来を予想した。また、中・大容量UPS、無線基地局用バックアップ電源、直流電源装置(100V系)、鉄道用電力貯蔵、小型蓄電システム向けの二次電池市場や参入企業動向についてもまとめた。

◆調査結果の概要

■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場

 

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

系統・再エネ併設用向け

7,145億円

180.8%

2兆 220億円

5.1倍

住宅用向け

1,481億円

113.5%

3,131億円

2.4倍

業務・産業用向け

711億円

124.1%

3,487億円

6.1倍

その他

5,090億円

119.6%

7,621億円

179.1%

合 計

1兆4,428億円

143.1%

3兆4,460億円

3.4倍

※市場データは四捨五入している
※その他に含まれる直流電源装置(100V系)、小型蓄電システム、鉄道用電力貯蔵システムは日本市場のみを対象

近年、市場は再生可能エネルギーの導入補助政策の整備などにより、急速に拡大している。2021年の市場は前年比43.1%増が見込まれる。このうち、系統・再エネ併設用向けは、系統用を中心とした蓄電システムの増加により、前年比80.8%増の7,145億円になるとみられる。住宅用蓄電システムは、日本や欧州、米国、豪州がメインの市場となっており、在宅時間の増加が各エリアの蓄電システムの需要を押し上げたことで搭載される二次電池の市場は前年比13.5%増の1,481億円が見込まれる。また、業務・産業用向けは、蓄電システムが米国を中心とした北米でのデマンドチャージ対策のピークカット用途(契約電力を超える需要の場合は電力をカットし、蓄電池で対応する用途)などによって伸長し、前年比24.1%増の711億円が見込まれる。

今後は、カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの導入量が拡大し、蓄電システムの需要増加が期待され、採用される二次電池の市場も大きく拡大するとみられる。特に、系統・再エネ併設用向けでは、太陽光発電用や風力発電システム用が伸長すると予想される。住宅用向けは、世界的な住宅太陽光発電促進の流れや日本でのZEH住宅の推進、災害発生時でも電力インフラを維持するレジリエンス性の強化のほか、住宅用蓄電システムの低価格化に伴い、搭載される二次電池も伸長するとみられる。長期的には、デマンドレスポンス(DR)やバーチャルパワープラント(VPP)などの各種エネルギーサービスとの連携活用の拡大が予想される。業務・産業用向けは、100kWh以上の蓄電システムにおいて、PVシステムを中心に導入が進んでいるほか、エネルギーサービス用電源としての需要が高まっている。また、価格競争力のある蓄電システムが投入されたことで搭載される二次電池が増加していることや、日本では2024年に再エネを含む電力の需要予測量と発電量測量などとの誤差を修正するための調整力を、電力管内を超えて取引する需給調整市場の一部が開設されるため、二次電池の需要が増加するとみられる。これらの動きから、市場は2035年に2020年比3.4倍の3兆4,460億円が予測される。

◆注目市場

●系統・再エネ併設用蓄電システム向け二次電池の世界市場

 

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

系統用

5,124億円

196.4%

1兆1,476億円

4.4倍

太陽光発電用

1,718億円

172.7%

6,095億円

6.1倍

風力発電用

303億円

87.1%

2,650億円

7.6倍

合 計

7,145億円

180.8%

2兆 220億円

5.1倍

※市場データは四捨五入している

系統用では、米国や欧州での供給される電力の品質を維持するアンシラリーサービス向けの増加が、太陽光発電や風力発電の再エネ併設用では、米国や豪州などにおける大規模な太陽光発電システムの案件増加が、二次電池の市場拡大に繋がっている。また、日本では、需給調整市場の一部が開設されたことで、高速応答性や出力変化スピード、充放電による調整力の大きさに対応した蓄電システム向けの二次電池が伸長している。今後は、多くのエリアにおいて再生可能エネルギーの発電コストが既存の電力と同等以下になることが想定されるため、太陽光発電システムや風力発電システムの普及拡大が予想され、それらに併設される蓄電システムに搭載される二次電池も伸長するとみられる。また、長期的には、既存の発電所からの送電や新規の発電所の設置などの兼ね合いから離島マイクログリッドや系統が不安定なエリアでのマイクログリッドでの採用も、市場拡大の要因になるとみられる。

電池別でみると、LiBが設置場所や用途を問わないため採用が進んでおり、2019、2020年頃より数百MWクラスの大型案件が相次いでいるため急速に伸びている。今後は、車載電池の量産によりLiB単価が低下することで、系統・再エネ併設用蓄電システム向けでも用途が広がり、大幅な伸長が予想される。NAS電池やレドックスフロー電池は、中長期的には、再生可能エネルギーの導入量拡大に伴い、系統安定化対策のうち、電池の充放電の時間が長い長周期用途の需要が伸長するとみられる。

●業務・産業用蓄電システム向け二次電池の世界市場

 

2021年見込

2020年比

2035年予測

2020年比

100kWh未満

246億円

120.0%

1,289億円

6.3倍

100kWh以上

465億円

126.0%

2,199億円

6.0倍

合 計

711億円

124.1%

3,487億円

6.1倍

※市場データは四捨五入している

商業施設・産業施設・公共施設に設置される蓄電システム向け二次電池を対象とする。主な用途は、商用電源や発電機と連携し、ピークカットやオフピーク時に蓄電しピーク負荷時に放電するピークシフト、災害時などの非常用電源、自家消費用再生可能エネルギーの負荷平準化などである。小規模施設(主に商業・公共施設)に設置される100kWh未満の蓄電システム向けと、中大規模施設(主に産業施設)に設置される100kWh以上の蓄電システム向けに大別される。

100kWh未満の蓄電システム向けは、米国におけるデマンドチャージ対策のピークカット用途での導入など北米での需要が中心である。今後は、豪州でのVPP構築に伴う蓄電システムの導入も増加することから伸長するとみられる。日本では、公共施設・学校、自治体施設向けなどを中心にBCP対策としての導入が進んでいるが、補助金に依存しているため、市場が導入補助制度や仕組みに左右される。今後は、補助金依存からの脱却を目指すとともに、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を100%環境自動車とする方針が示されていることから充電時の急激な電力需要に対応するために、充電インフラ向け蓄電システム向けの需要増加により伸びるとみられる。

電池別では、鉛電池とLiBが採用されているが、LiBは鉛電池に対して入出力特性が優れていることや長期的に見た場合の価格の低下などから採用が増加するとみられる。

100kWh以上の蓄電システム向けは、PVシステムとの連携によるピークカットやピークシフトを中心に、非常用電源や省エネ、落雷時などに発生する瞬時的な電圧低下への対策などを組み合わせたマルチユースとしての導入が進んでいる。近年は、VPPやDR、インバランス補償サービスといったエネルギーサービス用電源での利用が注目されている。また、EVやPHVなどが普及するエリアでは、充電時の急激な需要増加を防ぐため、充電ステーションに蓄電池を併設する動きが増えている。今後は、米国や中国市場での需要拡大が予想される。米国では、これまでのデマンドチャージャ対策のピークカット用途に加え、PVシステムと連携した住宅用蓄電システムの投資額に対するITC(投資税額控除)による導入促進、中国では、環境自動車の普及に伴う充電ステーションへの設置が増えることによって、それらに使用される二次電池の需要も増えるとみられる。日本では、近年、数百kWh程度の中規模において、価格競争力のある蓄電システムが投入されたほか、需給調整市場において、現在開設されている三次調整力に加え、速い応動時間が求められる一次・二次調整力が2024年に開設されることで、これらの調整力に対応した二次電池が2035年に向けて伸長していくと予想される。

電池別では、LiBは即応性や出力特性、サイクル特性に優れているため、広く採用されている。生産量の増加に伴い価格の低下が続いており、今後も車載向けでの出荷増加により低価格化が進み、導入事例の増加による実績や信頼性の向上などにより、採用は拡大すると予想される。鉛電池は信頼性が高く、再生可能エネルギーの負荷平準化などで採用されている。NAS電池は、大容量や電池の充放電をする時間が長い長周期用途の導入が進んでおり、現在の主要用途であるエネルギーサービス用電源(VPPやDR)などの採用が今後も増加するため、拡大するとみられる。レッドクスフロー電池は、サイクル寿命の長さや大型化に適した構造から、再生可能エネルギーの負荷平準化や併用ピークカット、BCP対策のうちMW級の需要家向けなど長周期用途での導入が進んでいる。中長期的には量産効果や新型電解液の採用によって低価格化が進むため、拡大が予想される。

◆調査対象

二次電池

・鉛電池(Pb)

・電気二重層キャパシタ

・レドックスフロー電池

・リチウムイオン電池(LiB)

(EDLC)

 

・ニッケル水素電池(NiMH)

・リチウムイオンキャパシタ

 

・NAS電池

(LiC)

 

蓄電システム

・中・大容量UPS

・住宅用

・系統・再生エネ併設用

・無線基地局用バックアップ電源

・業務・産業用(100kWh未満)

・鉄道用電力貯蔵

・直流電源装置(100V系)

・業務・産業用(100kWh以上)

・小型蓄電

※網掛けの品目は日本市場のみを対象


2021/10/06
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