PRESSRELEASE プレスリリース

第22011号

EMSと関連機器・サービスの国内市場を調査
―2035年度予測(2020年度比)―
■HEMS市場    104億円(67.7%増)
ERABによる需要やエネルギー用途以外の機器との接続による付加価値の向上などで市場拡大
●見える化ツール市  145億円(61.1%増)
カーボンニュートラルへの取り組み推進や少子高齢化による労働力不足で需要増加

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、企業活動の脱炭素への取り組みや意欲が高まっており、需給調整や分散型電源の最適な運用などの活用に期待が集まるエネルギーマネジメントシステム(EMS)と、関連するシステム・機器、サービスの国内市場を調査した。その結果を、エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2022にまとめた。

この調査では、EMS6品目と、関連するシステム・機器、サービスについて発電分野5品目、送配電分野12品目、小売分野5品目、O&M・その他分野7品目の市場を分析した。

◆調査結果の概要

■EMS市場

 

2021年度見込

2020年度比

2035年度予測

2020年度比

全体

696億円

101.3%

879億円

127.9%

 

HEMS

65億円

104.8%

104億円

167.7%

FEMS

22億円

100.0%

30億円

136.4%

※HEMSとFEMSは全体の内数

2021年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響により設備投資が抑制されているものの、前年度比微増となるとみられる。中長期的には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再エネ・省エネニーズが増大し、需給調整ビジネスやマイクログリッドが立ち上がることで活用シーンが増えるため、2035年度には2020年度比27.9%増が予測される。

HEMS(Home Energy Management System)は家庭内のエネルギーの見える化や、設備機器の制御などを行うシステムを対象とする。

HEMSは、ZEH推進による新築戸建住宅への太陽光発電システムや蓄電システムなどの設置増加に伴って、採用が増えている。2021年度の市場は、新型コロナ流行の影響により縮小した新築戸建住宅市場が回復に向かっていることから、前年度比4.8%増の65億円が見込まれる。

長期的には、仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)やDR(Demand Response)を通じて、需要家や一般送配電事業者、小売事業者、再生可能エネルギー発電業者などに、調整力やインバランス回避などの各種サービスを提供するERAB(Energy Resource Aggregation Business)の本格化に伴い、住宅におけるエネルギーのモニタリングや制御システムとしての需要が高まることや、家電製品などエネルギー用途以外の機器との接続によりホームIoTやスマート家電として新たな付加価値やサービスが期待されることから、2035年度に104億円が予測される。

FEMS(Factory Energy Management System)は工場や研究所など、産業施設における生産設備のエネルギーの見える化や使用状況の分析を行うシステムを対象とする。エネルギー使用状況の報告義務である「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の対象となる第一種、第二種エネルギー管理指定事業所でのシステム更新案件が中心であり、市場は横ばいで推移している。

2020年度は、新型コロナ流行の影響による企業の設備投資が抑制されたことから、自動車向けを中心に市場は縮小した。2021年度は、設備投資の回復がみられることや中小規模施設のEMS需要を取り込んでいるものの、市場は前年度程度にとどまると予想される。

今後は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、エネルギー消費の多い産業施設において、生産効率化や再生可能エネルギーの分散型電源の高効率利用などを目的に需要が高まるとみられ、2035年度の市場は2020年度比36.4%増が予測される。

◆注目EMS関連機器市場

●見える化ツール

2021年度見込

2020年度比

2035年度予測

2020年度比

95億円

105.6%

145億円

161.1%

業務・産業施設で採用される電力計測機器やデータ収集機器を対象とする。

製造業においてエネルギー使用状況報告義務やエネルギー消費原単位削減義務といった省エネ法への対応を目的に、対象となる大規模施設での採用が進んでいる。分電盤の分岐回路や受配電設備の主旋回路、負荷設備単位での電力計測を行う目的で、EMSの構成機器として採用されているほか、生産設備や受配電設備などの状態監視のために導入が進んでいる。

2020年度は、新型コロナの影響による自動車関連などの業績悪化に伴う設備投資の先送りや、見える化ツールを扱うシステムベンダーの営業機会が減少したことから、市場は縮小した。2021年度は、自動車関連が回復に向かっていることに加え、巣ごもり需要で好調な半導体関連や液晶関連の設備投資が積極的であることから、市場は前年度比5.6%増が見込まれる。また、クラウドサービスの増加による大規模データセンターでの需要が好調なほか、小売電気事業者が付加サービスとして需要家に提供しているデマンド監視システムの構成要素としての採用が進んでいる。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、特に製造業で脱炭素への取り組みや意欲が高まっており、今後は脱炭素への投資額増加を受け、EMSや生産効率化システムの構築案件が増えるため、市場拡大が予想される。また、再生可能エネルギーを中心とした環境負荷の少ない電源の最適利用やゼロカーボンシティなどのエリア単位でのエネルギー最適化など新たな需要も予想される。さらに、少子高齢化による労働力不足から、エネルギーデータの遠隔監視によるエネルギー管理、設備管理の省力化ニーズも高まり、2035年度には2020年度比61.1%増が予測される。

●ハイブリッドパワーコンディショナー

2021年度見込

2020年度比

2035年度予測

2020年度比

144億円

106.7%

240億円

177.8%

太陽光発電(PV)システムと蓄電システム双方の電力変換をコントロールするパワーコンディショナー(PCS)を対象とする。

住宅向けの小型製品が市場の中心であり、PVシステムと蓄電システムをセットで導入する際に配線を簡素化できることやPV自家消費の際の直流・交流交換の電力ロスが軽減されることから、需要が高まり、市場拡大してきた。

2021年度は、卒FIT関連やZEHの推進、災害対策意識の向上により蓄電システムの導入が進み、前年度比6.7%増の144億円が見込まれる。

ハイブリッドPCSを搭載した蓄電システムを新たにラインアップに加える企業も増えているほか、今後は、新築住宅や既存住宅、卒FITユーザーによるPV自家消費が増加し、2035年度に向けて市場拡大が予想される。

●V2X(自動車用充放電器)

2021年度見込

2020年度比

2035年度予測

2020年度比

30億円

142.9%

465億円

22.1倍

EVやPHVなどの車載蓄電池から、建物や電力系統に対して電力供給を行うための自動車用充放電器を対象とする。

2018年度以降、大規模自然災害の発生に伴うBCP用や卒FITユーザーによるPV自家消費用として、各種補助金制度の整備などもあり、市場は拡大してきた。2021年度は、前年度から続く半導体不足の影響で自動車生産に影響が出ているものの、引き続きBCPや卒FIT向けの導入が進んでいるため市場は前年度比42.9%増の30億円が見込まれる。

新規参入を目指し製品開発を進めている事業者もみられ、製品投入が活発化することで市場は拡大が予想される。長期的には、EVやPHVの普及やEVやPHVをリソースとしたVPPやDRなどでの活用も期待されるため、大幅な市場拡大が予想される。

●ガススマートメーター

2021年度見込

2020年度比

2035年度予測

2020年度比

313億円

92.3%

560億円

165.2%

通信機能を搭載し、遠隔検針への対応や遠隔監視機能を向上させた家庭向けガスメーターを対象とする。

2021年度は、LPガス用メーターの検定満了に伴う更新需要が落ち着いているため、市場縮小が予想される。しかし、都市ガス用は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社を中心に採用が増加しているほか、2020年末に同3社がスマートメーターシステムの共同開発を発表していることから採用がさらに進むとみられ、他の都市ガス事業者での導入も進展すると予想される。

長期的には、都市ガス用の需要増加とともに、LPガス用は、再び更新需要の獲得が進むとみられ、2035年度の市場は2020年度比65.2%増の560億円が予測される。

◆調査対象

EMS市場

・HEMS(住宅向け)

・BEMS(ビル/業務施設向け)

・CEMS

・MEMS

・REMS(店舗/商業施設向け)

(マイクログリッド/

(マンション/集合住宅向け)

・FEMS(産業施設向け)

コミュニティ向け)

EMS関連システム・機器、サービス市場

発電分野

・太陽光発電遠隔監視システム

・分散型電源最適制御システム

・コージェネレーション

・発電プラント監視

・ハイブリッド

システム

制御システム

パワーコンディショナー

 

送配電分野

・直流給電システム

・キュービクル式高圧受電設備

・ガス絶縁開閉装置(GIS)

・需給管理システム

・絶縁監視装置

・配電用変圧器

・電力スマートメーター

・マルチリレー

・配電盤・スイッチギヤ

・見える化ツール

・系統用

 

・分電盤

発電所併設蓄電システム

 

小売分野

・蓄電池制御システム

・顧客情報管理システム

・需要家用蓄電システム

・高圧一括受電サービス

(CIS)

・V2X(自動車用充放電器)

O&M・

その他分野

・設備監視システム

(建物設備向け)

・IoT通信サービス

(キャリア/LPWA)

・IoTゲートウェイ

(エネルギー管理用途)

・自動検針システム

・ドローン

・水道スマートメーター

・ガススマートメーター

(エネルギーインフラ監視用途)

 


2022/02/09
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。