PRESSRELEASE プレスリリース
■パワー半導体 5兆3,587億円(2.6倍) 自動車・電装分野での採用増で拡大。
うち、次世代パワー半導体は、SiCパワー半導体がけん引し1兆円突破。
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 清口 正夫 03-3241-3470)は、カーボンニュートラルの実現を目標とした、電動車や再生可能エネルギーの普及により需要増加が期待されるパワー半導体の世界市場を調査した。その結果を「2022年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では、シリコンパワー半導体や次世代パワー半導体のほか、構成部材20品目、製造装置19品目の市場を捉えた。
◆次世代パワー半導体注目市場
■SiCパワー半導体
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
1,206億円 |
159.5% |
9,694億円 |
12.8倍 |
SiC-SBD、SiC-FET、SiCパワーモジュールを対象とする。
電力の効率化を目的に採用が進んでおり、2021年の市場は、サーバー電源などの情報通信機器分野や太陽光発電などのエネルギー分野での需要増加に加え、電動車や充電インフラなどの普及による自動車・電装分野の伸びもあり、前年に続き、大きく拡大した。SiC-FETは自動車・電装分野、SiC-SBDは情報通信機器分野が中心であり、2022年の市場は、アプリケーションの需要増加や新規採用により、1,000億円を超え、前年以上の高い伸びが予想される。
欧州をはじめとした各国で脱内燃車に向けた動きが活発になっており、DC-DCコンバーターやオンボードチャージャーなどの補機系、駆動用インバーターモジュールで採用が進むことで、2025年には自動車・電装分野が半数を占めるとみられる。また、低価格化が進むことで、シリコンパワー半導体からの置き換えがさらに進展し、高級車だけでなく幅広い車種でも採用され、2030年には2021年比12.8倍の9,694億円が予測される。
■GaNパワー半導体
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
39億円 |
121.9% |
305億円 |
9.5倍 |
ACアダプターやサーバー電源など情報通信機器分野がアジア圏で好調なことに加え、ロボットなどの産業分野でも採用が進み、アプリケーションのすそ野が広がっている。
今後もこれらのアプリケーションを中心に堅調な需要が予想されるほか、自動車・電装分野では、スイッチング特性により受動部品の削減、コイルの小型化などが図れることから、電動車の走行可能距離の延長やバッテリーの小型化を目的に、2024年頃から採用が本格化し、市場は急速に拡大していくと予想される。
■酸化ガリウムパワー半導体
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
3億円 |
― |
470億円 |
― |
量産化に向けたサンプル評価が継続的に行われている。次世代パワー半導体の中でも高耐圧・低損失であり、低コスト化が可能であることから、早期実用化が期待されている。
2022年から量産開始が予定されており、民生機器分野で採用されることで、3億円の市場が見込まれる。
今後は、高耐圧化、大電流化の進展により、情報通信機器分野や産業分野での採用が期待される。また、自動車・電装分野での採用に向けた製品開発が進んでおり、長期的にはGaNパワー半導体の市場を上回ると予想される。
◆調査結果の概要
●パワー半導体の世界市場
|
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
シリコン |
2兆2,137億円 |
110.0% |
4兆3,118億円 |
2.1倍 |
次世代 |
1,249億円 |
158.7% |
1兆 469億円 |
13.3倍 |
合 計 |
2兆3,386億円 |
111.8% |
5兆3,587億円 |
2.6倍 |
シリコンパワー半導体と次世代パワー半導体(SiC、GaN、酸化ガリウム、ダイヤモンド)を対象とする。
市場は、需要が落ち込んだ2020年から一転して、巣ごもり需要の継続や白物家電を中心とした民生機器分野の回復、産業分野での設備投資の活性化、テレワークの普及や5G関連の投資継続による情報通信機器分野の好調に加えて、中国や欧州での自動車・電装分野とエネルギー分野の需要増加により、2021年は前年比20.7%増と大きく伸びた。年間を通して需要が増えた一方、供給が追いついておらず、パワー半導体メーカー各社は部材調達方法や製品価格の見直しなどを進めている。2022年も市場拡大が続くものの、部材の供給不足により、伸びは鈍化するとみられる。
今後も、カーボンニュートラルの実現を目標に電動自動車や再生可能エネルギーの普及が進むことで、市場は拡大し、2030年には2021年比2.6倍の5兆3,587億円が予測される。また、欧米系、日系に加え、近年中国系パワー半導体メーカーが台頭しており、最大の需要地である中国市場の拡大により、中国の比率が高まるとみられる。
次世代パワー半導体は、シリコンと比較して性能面での優位性から注目が集まっている。その中でも、SiCパワー半導体が情報通信機器分野、エネルギー分野、自動車・電装分野の需要が堅調である。自動車・電装分野の増加に加えて、GaNパワー半導体の需要増加、酸化ガリウムパワー半導体の市場立ち上がりにより、2030年頃には1兆円突破が予測される。
●構成部材の世界市場
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
2,753億円 |
110.2% |
4,994億円 |
199.8% |
パワー半導体の需要増加に加え、原料価格の高騰による価格上昇がみられたことから、2021年の市場は前年比20.1%増となった。2022年は、部材メーカー各社の供給量を上回る需要もみられ、市場拡大は続くものの、伸びは鈍化すると予想される。
絶縁放熱基板や封止材料などの後工程材料が市場をけん引している。今後は、自動車・電装分野での採用により、後工程材料では、シンタリング接合材や窒化ケイ素回路基板などの伸びが期待される。
ウエハーは、SiCウエハーがSiCパワー半導体の伸びに連動する形で、拡大を続けているが、ウエハー価格の下落によって伸びは鈍化するとみられる。また、GaNウエハーと酸化ガリウムウエハーは研究開発用途が中心であり、需要は限定的である。
●製造装置の世界市場
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
2,085億円 |
120.0% |
3,736億円 |
2.1倍 |
2020年に予定されていた設備投資を延期したケースもみられたことから、2021年は中国などのアジアを中心に設備投資が活発であり、市場は前年比29.6%増となった。積極的な設備投資に加えて、SiCウエハーの8インチ化対応へのニーズが増えていることから、2022年も市場は拡大するとみられる。しかし、製造装置に使用される半導体不足や部材の調達難による納期の長期化もあり、市場は大きく伸びるものの、伸び率は前年より鈍化すると予想される。
◆調査対象
パワー半導体 |
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シリコンパワー半導体 |
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SiCパワー半導体 |
・整流ダイオード |
・高耐圧パワーMOSFET |
・SiC-SBD |
・SBD |
・IGBTディスクリート |
・SiC-FET |
(ショットキー・バリア・ダイオード) |
・サイリスタ・トライアック |
・SiCパワーモジュール |
・FRD |
・IGBTモジュール |
GaNパワー半導体 |
(ファスト・リカバリー・ダイオード) |
・インテリジェント |
酸化ガリウムパワー半導体 |
・バイポーラパワートランジスタ |
パワーモジュール |
ダイヤモンドパワー半導体 |
・低耐圧パワーMOSFET |
・サイリスタモジュール |
その他 |
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・パワーIC |
パワー半導体構成部材 |
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・SiCウエハー |
・CMPスラリー |
・窒化アルミニウム回路基板 |
・GaNウエハー |
・ダイボンディングペースト |
・アルミナ系回路基板 |
・酸化ガリウムウエハー |
・はんだ |
・窒化ケイ素回路基板・白板 |
・ダイヤモンドウエハー |
・シンタリング接合材 |
・金属放熱基板 |
・半導体レジスト |
・リードフレーム用条材 |
・放熱シート |
・バッファーコート膜 |
・ボンディングワイヤー |
・放熱グリース |
・CMPパッド |
・封止材料 |
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パワー半導体製造装置 |
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・エピ膜成長装置 |
・レーザーアニール装置 |
・モールディング装置 |
・CMP装置 |
・ドライエッチング装置 |
・ウエハー外観検査装置 |
・プラズマCVD |
・スパッタリング装置 |
・チップ外観検査装置 |
・コータ/デベロッパ |
・バックグラインダ |
・セラミック基板検査装置 |
・露光装置 |
・ダイシング装置 |
・電気テスタ装置 |
・イオン注入装置 |
・ダイボンダー |
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・熱処理装置 |
・ワイヤボンダー |
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