PRESSRELEASE プレスリリース
■機能性表示食品の国内市場 5,462億円(24.0%増)
脂肪対策需要の高まりに加え、ストレス緩和などを訴求した商品が市場をけん引
●脂肪に関するヘルスクレーム 3,224億円(17.3%増)
大型ブランドが脂肪に関するヘルスクレームを活用して参入し、拡大に貢献
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、機能性表示食品の躍進が続き、複数のヘルスクレームを組み合わせたマルチヘルスクレームの展開にも注目が集まる保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)の市場動向を調査した。その結果を「H・Bフーズマーケティング便覧 2023 No.3 機能性表示別市場分析編」にまとめた。
この調査では保健機能食品について脂肪低減やストレス緩和などのヘルスクレーム(健康表示、機能性表示)別、ダイエットや整腸効果などの訴求効能別、成分別に分類して最新の市場動向を捉えた。
◆調査結果の概要
●機能性表示食品の国内市場
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2022年見込 |
2021年比 |
2023年予測 |
2021年比 |
明らか食品 |
349億円 |
112.2% |
369億円 |
118.6% |
ドリンク類 |
2,983億円 |
134.4% |
3,265億円 |
147.1% |
サプリメント |
2,131億円 |
113.6% |
2,302億円 |
122.7% |
合 計 |
5,462億円 |
124.0% |
5,935億円 |
134.7% |
※市場データは四捨五入している
2015年の機能性表示食品制度開始以降、サプリメントやドリンク類で商品が活発に発売され拡大が続いている。近年は話題性の高いヒット商品の発売や、特定保健用食品や一般食品・飲料から機能性表示食品への切り替えで市場が賑わっており、2020年に特定保健用食品の規模を上回った。
ヘルスクレームでは、生活習慣病やダイエットに関連する脂肪の需要が旺盛であることに加え、現代社会の悩みを反映してストレス緩和や睡眠、認知などを訴求した商品が伸びている。また2022年は複数のヘルスクレームを組み合わせたマルチヘルスクレームによる差別化にも注目が集まった。これによって需要開拓の幅が広がり、2022年の市場は前年比24.0%増の5,462億円が見込まれる。
明らか食品の規模は全体の10%未満にとどまるが、シリアルフーズやヨーグルトなどの新商品がみられ、伸長している。
ドリンク類は大型ブランドのリニューアルや新商品の投入が活発であり、ヒット商品になるケースもみられ、無糖茶飲料やドリンクヨーグルト、ノンアルコールビール・ドリンクまで多種多様な商品が発売されている。
サプリメントは機能性表示食品制度の開始当初から活発に商品展開が行われている。特定保健用食品では展開が難しく、メーカーの注力度も機能性表示食品に集中しているため、伸びが続いている。
●特定保健用食品の国内市場
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2022年見込 |
2021年比 |
2023年予測 |
2021年比 |
明らか食品 |
1,010億円 |
97.3% |
998億円 |
96.1% |
ドリンク類 |
1,730億円 |
91.9% |
1,631億円 |
86.6% |
サプリメント |
120億円 |
96.8% |
117億円 |
94.4% |
合 計 |
2,860億円 |
94.0% |
2,746億円 |
90.2% |
特定保健用食品の市場は2018年に前年を下回り、その後は縮小が続いている。機能性表示食品制度が開始されてからは、特定保健用食品に注力する企業が減り、新商品発売が少ないことに加え、既存商品の機能性表示食品への切り替が進んでおり、2022年の市場は前年比6.0%減の2,860億円が見込まれる。
明らか食品はヨーグルトやガム、納豆などが発売されている。2021年に一部商品がプロモーション展開によって伸びたことから前年を上回ったが、2022年は再び縮小するとみられる。
ドリンク類が約60%を占めるが、近年は機能性表示食品への需要シフトや、メーカーの注力度低下によって減少が続いている。
サプリメントは注力する企業が少なく、特定保健用食品の商品数が限られる。2020年代に入ってからは大型の新商品もみられず、マイナスが続いている。
◆注目市場
●脂肪に関するヘルスクレーム
2022年見込 |
2021年比 |
2023年予測 |
2021年比 |
3,224億円 |
117.3% |
3,489億円 |
126.9% |
脂肪に関するヘルスクレームを含む機能性表示食品と特定保健用食品の合計を対象とした。機能性表示食品が約70%を占め、需要の高さから多くの商品があり、例年新商品も活発に発売されている。2022年の市場は前年比17.3%増の3,224億円が見込まれる。
近年は2019年の「お~いお茶 濃い茶」(伊藤園)や2022年の「伊右衛門 濃い味」(サントリー食品インターナショナル)などドリンク類の大型ブランドが機能性表示食品にリニューアルするケースがみられ、市場の拡大に大きく寄与している。
また、機能性表示食品は制度の特性上差別化が難しい面もあり、競合の激化に伴って複数のヘルスクレームを組み合わせたマルチヘルスクレームの展開が増え、訴求の幅が広がっている。2022年は糖や血圧、腸内環境とのマルチヘルスクレームやダイエット要素を強めた革新的なヘルスクレームに加え、筋力維持やエネルギー消費との新たな組み合わせや、5つのヘルスクレームを含む新商品も登場しており、今後はヘルスクレームの組み合わせによってどこまで需要開拓が進むかにも注目が集まっている。
●ストレス緩和に関するヘルスクレーム
2022年見込 |
2021年比 |
2023年予測 |
2021年比 |
557億円 |
184.4% |
582億円 |
192.7% |
特定保健用食品は存在せず、機能性表示食品のみの市場である。トリプルヘルスクレームのストレス緩和×睡眠×腸内環境と、単体のストレス緩和が主体となっている。
2019年にヤクルト本社、アサヒ飲料が商品を発売したことで本格的に市場が形成され、コロナ禍で関心が高まったストレスや睡眠に関する悩みに対応する商品として注目を集めた。特に「Yakult1000」、「Y1000」(ヤクルト本社)は品薄になる程のヒット商品として度々メディアでも取り上げられ、トライアル需要を獲得したことで、大きく伸びている。今後の伸びは鈍化するとみられるため、トライアル顧客の定着や店頭の回転率アップが課題である。
ヘルスクレームでは、ストレス緩和単独の需要は減少しているため、マルチヘルスクレームによって差別化を図る動きが活発である。特に睡眠や疲労感軽減は、ストレス緩和との親和性が高く、現代社会の悩みにも合致しており採用が多い。2022年には5種類のヘルスクレームを組み合わせた商品も登場するなど、メーカーは最適な組み合わせの試行錯誤を続けている。
●乳酸菌を関与成分とした特定保健用食品と機能性表示食品
2022年見込 |
2021年比 |
2023年予測 |
2021年比 |
1,939億円 |
109.5% |
1,954億円 |
110.3% |
乳酸菌を関与成分とした特定保健用食品、機能性表示食品を対象とする。ビフィズス菌は対象外としている。腸内環境に関するヘルスクレームが基本であり、2000年代は特定保健用食品のヨーグルトや乳酸菌飲料が主体の市場であったが、近年は機能性表示食品で乳酸菌を活用した多様な商品が発売されているため、2023年には機能性表示食品が特定保健用食品を上回るとみられる。
機能性表示食品は近年、「Yakult1000」、「Y1000」(ヤクルト本社)や「iMUSE」シリーズ(キリングループ各社)が、ストレス緩和×睡眠×腸内環境や免疫機能維持といった特定保健用食品にはない訴求によって需要獲得を進めたことから大きく伸びており、市場の拡大に貢献している。
◆調査対象
保健機能食品 |
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特定保健用食品 |
栄養機能食品 |
機能性表示食品 |
|||
ヘルスクレーム |
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・脂肪横断 |
・腸内環境 |
・認知 |
・脂肪(低減)×糖(吸 |
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・糖横断 |
・脂肪(吸収抑制)× |
・脂肪(低減)×脂肪(吸収 |
収抑制)×腸内環境 |
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・血圧横断 |
糖(吸収抑制) |
抑制)×糖(吸収抑制) |
・肌の保湿(弾力・バリ |
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・コレステロール横断 |
・膝関節 |
・腸内環境/便通改善 |
ア機能) |
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・ストレス緩和横断 |
・脂肪(吸収抑制) |
・糖(吸収抑制) |
・便通改善 |
||
・認知横断 |
・ストレス緩和×睡眠× |
・睡眠 |
・認知(記憶) |
||
・肌の保湿横断 |
腸内環境 |
・疲労感軽減 |
・脂肪(低減)×腸内環境 |
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・光刺激保護・コントラ |
・血圧 |
・脂肪(吸収抑制)× |
・脂肪(低減)×認知 |
||
スト調整横断 |
・膝関節×筋力維持 |
糖(吸収抑制)×血圧 |
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・脂肪(低減) |
・免疫機能維持 |
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成分 |
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・乳酸菌 |
・ビフィズス菌 |
・ローズヒップ由来 |
・エラグ酸 |
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・食物繊維 |
・DHA・EPA |
ティリロサイド |
・グルコシルセラミド |
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・カテキン |
・GABA |
・葛の花由来イソフラボン |
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. 機能性表示食品における生鮮食品・惣菜 |
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・生鮮食品・惣菜 |
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機能性表示食品におけるPB |
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・PB(プライベートブランド) |
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訴求効能 |
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・滋養・強壮 |
・スポーツサポート |
・骨・関節・筋肉サポート |
・ストレス緩和・睡眠サポート |
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・肝機能改善 |
・生活習慣病予防 |
・貧血予防・改善 |
・グリーンチャージ |
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・美容効果 |
・血行促進 |
・オーラルケア |
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・整腸効果 |
・免疫対策 |
・アイケア |
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・ダイエット |
・基礎栄養チャージ |
・ビタミン・ミネラルチャージ |
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*富士経済H・Bフーズの定義 H・Bフーズは、健康(Health)維持増進・回復目的や美容(Beauty)目的で飲食する食品。即ち、何らかの効能・効果(機能性)を期待できる食品、および、期待されるイメージをもつ食品。法的区分上、医薬品・医薬部外品扱いのものは対象としない。
*同H・Bフーズの分類 全体を機能志向食品と健康志向食品の2分野に分けた。機能志向食品は味覚より機能を重視した、一般用医薬品との競合が予想される商品。健康志向食品は機能よりも味覚を重視した、一般加工食品との競合が予想される商品。 さらにこの2分野を以下のように4つに区分した。 (1)機能志向食品(「H・Bフーズマーケティング便覧 No.1」に掲載) ●サプリメント:(財)日本健康・栄養食品協会で定めるJHFA規格品に加え、規格外の健康食品でも違法性が明らかな成分を使用していないものも対象とした。 ●シリーズサプリメント:サプリメントのうちビタミン・ミネラル類などのアイテムを各種取り揃えたシリーズ展開のサプリメント(剤型は医薬品的形状が主体)を「シリーズサプリメント」と呼称する。 (2)健康志向食品(「H・Bフーズマーケティング便覧 No.2」に掲載) ●明らか食品:一般加工食品と呼ばれる「通常の形態をした、日常的に食べられる食品」に機能成分を添加、強化して、商品の機能性を訴求する食品群を対象とした。 ●ドリンク類:明らか食品で飲料分野に属するものは、(医薬品/新・医薬部外品のドリンク剤と区分するために)本調査では「ドリンク類」と呼称する。
*「保健機能食品」とH・Bフーズの関係 特定保健用食品は、何らかの機能性(特定保健目的)を有しているため全てH・Bフーズの対象に含め、栄養機能食品は、機能性を訴求している商品のみをH・Bフーズの対象とした。また、機能性表示食品は加工食品のみをH・Bフーズの対象とし、生鮮食品は対象外とした。 |