PRESSRELEASE プレスリリース
■ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場 8兆741億円(3.5倍)
再生可能エネルギーの導入量拡大、電力取引市場での蓄電池活用が進み大幅に拡大
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、再生可能エネルギーの本格的な導入に向けて重要性が高まるESS(Energy Storage System)・定置用蓄電池の世界市場を調査した。その結果を「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2023 ESS・定置用蓄電池分野編」にまとめた。
この調査では、電気代上昇・自家消費利用の増加により拡大を続ける住宅用蓄電池、海外からの参入が増加する業務・産業用蓄電池、電力取引市場での採用増加が注目されている系統用蓄電池のほか、UPSや基地局併設のバックアップ電源システムなどを対象とし、2040年までの長期市場を予測した。また、脱炭素化・再生可能エネルギー普及目標や、定置用蓄電池を活用した各種蓄電池ビジネスについても整理するとともに、蓄電池のコスト分析なども行った。
※直流電源装置(100V系)、小型蓄電システム(非系統連系タイプ)、ポータブル電源、鉄道用電力貯蔵システムは日本市場のみを対象とする。
◆調査結果の概要
●ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場
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2023年見込 |
2022年比 |
2040年予測 |
2022年比 |
金額 |
3兆4,191億円 |
147.3% |
8兆 741億円 |
3.5倍 |
容量 |
109.7GWh |
142.7% |
421.7GWh |
5.5倍 |
カーボンニュートラル社会の実現に向け、世界的な再生可能エネルギー(変動電源)の導入量増加に伴い、生成した電力を貯蔵する定置用蓄電池の重要性も増しているため、市場は拡大が続いている。電力系統側では、調整電源(系統蓄電所)としての蓄電池導入が進み、需給調整市場や卸電力市場での活用が期待されている。また、太陽光発電システムや風力発電システムの出力平滑化を目的とした導入も広がっている。需要家側では、太陽光発電システムなどの自家消費やピークカット用途、非常用電源用途としての採用が進んでいる。
2022年は原材料価格の高騰などにより蓄電池価格が上昇したものの、自家消費の需要増加や、系統用蓄電池などの大規模プロジェクトの増加、データセンターや5G通信などへの設備投資増加などにより市場は拡大した。2023年も引き続き需要は旺盛であり、市場は前年比47.3%増の3兆4,191億円が見込まれる。
長期的には、再生可能エネルギーの普及に伴い、定置用蓄電池の活用シーンも増加していくことが想定され、2040年の市場は2022年比3.5倍の8兆741億円が予測される。また、EVからESSへのリユース電池活用なども広がり、循環型電池市場の形成が期待される。
●分野別ESS・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場
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2023年見込 |
2022年比 |
2040年予測 |
2022年比 |
住宅分野 |
3,704億円 |
122.6% |
6,437億円 |
2.1倍 |
業務・産業分野 |
1,065億円 |
131.0% |
5,778億円 |
7.1倍 |
系統・再エネ併設分野 |
2兆1,727億円 |
171.5% |
5兆8,597億円 |
4.6倍 |
UPS/基地局分野 |
7,465億円 |
114.7% |
9,521億円 |
146.2% |
その他 |
231億円 |
113.2% |
408億円 |
2.0倍 |
合 計 |
3兆4,191億円 |
147.3% |
8兆 741億円 |
3.5倍 |
※市場データは四捨五入している
住宅分野は系統連系タイプの蓄電システム、また、V2Hシステムに付帯する蓄電池を対象とする。太陽光発電システムが普及しつつある先進諸国を中心とした自家消費利用の増加や、近年の電気代高騰が導入を促進している。また、今後は停電や自然災害、非常用のバックアップ電源としての需要も増加するとみられる。
米国の一部の州では新築住宅への太陽光発電の設置が義務化されている。日本でも東京都などで太陽光発電の設置義務化が検討されている。これらの施策に伴い、蓄電池の搭載率上昇が期待され、市場は拡大していくとみられる。
業務・産業分野は商業施設・産業施設・公共施設などに設置される蓄電池を対象とする。
小規模施設では自家消費向け太陽光発電システムの導入に当たり、蓄電池を組み合わせて導入するケースが大半となっている。今後、電気代の上昇などにより自家消費の動きが広がり、市場は拡大していくとみられる。
大規模施設では太陽光発電システムと連携させたピークシフトやピークカットが主な目的であり、再生可能エネルギーの自家消費や自己託送利用などが増加することで蓄電池の導入も進んでいくとみられる。将来的にはDR(ディマンドリスポンス)、VPP(バーチャルパワープラント)のリソース電源として蓄電池の利活用が増えると想定される。
系統・再エネ併設分野は、ユーティリティ関連施設に併設される大型の蓄電システムを対象とし、系統用・太陽光発電システム用・風力発電システム用に区分する。
再生可能エネルギーの普及に伴って調整用電源のニーズが拡大しており、日本では蓄電設備を設置し、蓄電池からの充電・放電による電力取引で収益を上げる「蓄電所ビジネス」が注目されている。将来的には蓄電所ビジネスなどの収益モデル確立や、再生可能エネルギーの普及に伴う蓄電池需要の増加が期待される。
UPS/基地局分野は中・大容量UPS(無停電電源装置)、無線基地局用バックアップ電源を対象とする。
クラウドサービスやIoTの進展に伴い、データセンターの建設数増加とともにUPSの需要も広がっている。基地局方面では5G・6G通信基地局の建設が活発化することで、バックアップ電源の需要が高まっていくと予想される。
◆注目市場
●系統用蓄電システム
2023年見込 |
2022年比 |
2040年予測 |
2022年比 |
1兆2,609億円 |
145.0% |
3兆7,835億円 |
4.4倍 |
2023年時点では実証や補助事業による導入が中心であるが、今後本格的な市場拡大が期待される。日本では近年、蓄電所ビジネスに伴う系統用蓄電池の導入が進み、大規模案件も増加している。
蓄電所ビジネスの拡大に加え、安定供給に課題がある再生可能エネルギーの導入に向け、発電側や系統側へ蓄電池を設置し、電力のタイムシフトや出力の平滑化する用途で需要増加が期待される。また、マイクログリッドなどの自立型地域電力システムの普及に伴い、需給管理システムとしてのニーズも期待され、2040年には2022年比4.4倍の3兆7,835億円に達すると予測される。
≪蓄電所ビジネス≫
大型の蓄電システムをスタンドアローンで電力系統に直接接続して充放電を行い、各種電力取引市場などで調整力、供給力を提供することで収益を得るというビジネスモデルである。収益源としては卸電力市場の値差での取引を行うアービトラージや、容量市場や長期脱炭素電源オークションでの供給力の提供、需給調整市場などへの調整力の提供が挙げられ、再生可能エネルギーの安定供給などへの貢献が期待され、近年注目を集めている。
太陽光発電システムの導入が増えていくことにより出力制御量の拡大が想定されることや、需給調整市場での1次・2次調整力の取引開始、脱炭素電源オークションの開始などにより、ビジネスチャンスが拡大していくと期待される。
◆調査対象
分野 |
対象品目 |
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住宅分野 |
・住宅用蓄電システム(系統連系タイプ) |
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業務・産業分野 |
・業務・産業用蓄電システム(300kWh未満) |
・業務・産業用蓄電システム(300kWh以上) |
系統・再エネ併設分野 |
・系統・太陽光発電システム・ 風力発電システム用蓄電システム |
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UPS/基地局分野 |
・中・大容量UPS |
・無線基地局用バックアップ電源装置 |
その他 |
・直流電源装置(100V系) |
・ポータブル電源 |
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・小型蓄電システム(非系統連系タイプ) |
・鉄道用電力貯蔵システム |