PRESSRELEASE プレスリリース

第23123号

電動キックボードシェア、配車サービスなど、モビリティサービスの国内市場を調査
産業とモビリティサービスの連携「xMaaS」が発展
●電動キックボードシェア  68億円(13.6倍)
都市部に加え、観光地や地方都市へのポート設置が進む
●配車サービス  8,000億円(5.6倍)
地方へサービスが展開されることや、流し・電話配車からの切り替えで成長
■観光MaaS  3兆4,532億円(2.4倍)
移動と手ぶら観光サービスや各種シェアリング、観光施設などの連携が広がる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、MaaS(Mobility as a Service)と観光や医療などの産業を掛け合わせた「xMaaS」とその関連市場について調査した。その結果を「2023年版 モビリティ社会を実現するxMaaS市場の将来展望」にまとめた。

この調査では、カーシェアや電動キックボードシェア、公共交通などのヒト移動サービス市場、自動配送ロボットや配送ドローンなどのモノ移動サービス市場、コインパーキングやMaaSアプリなどの周辺サービス市場、駐車場管理などのインフラ機器・システム市場、乗用車などのモビリティ市場の現状を調査し、将来を予想するとともに、xMaaS市場として観光、医療、小売、外食、介護福祉、子育て、物流、EV、宇宙の9分野の最新動向や将来を展望した。

近年、移動手段の検索やチケットの手配・決済を一括で行えるMaaSが広がったことや、DX化の加速で各産業とモビリティサービスを連携するxMaaSの環境が整いつつある。xMaaSを活用してモビリティサービスの需要を創出し、移動から観光や食事といった目的達成までのサポートや、交通弱者の移動手段確保や人手不足といった課題解決の手段の一つになることが期待され注目が集まっている。

◆注目市場

●電動キックボードシェア

2023年見込

2022年比

2035年予測

2022年比

17億円

3.4倍

68億円

13.6倍

道路交通法で特定小型原動機付自転車に該当する機体を対象としている。2023年7月より特定小型原動機付自転車の区分が設けられ、運転免許を持たなくとも16歳以上で電動キックボードに乗車可能となったことから、シェアリングサービスへの注目度が高まった。

都市圏を中心にシェアリングの拠点となる「ポート」の設置が進み、20~30代を中心として利用が広がっている。2023年の市場は前年比3倍以上の17億円が見込まれる。有力企業のLuuPでは小型モビリティを採用して狭小スペースなどを活用し、ポート数を大きく増やしているほか、2024年1月にも、シェアサイクルの事業者がサイクル用の拠点を活用し、電動キックボードシェアに新規参入する予定もあり、市場は今後も拡大することが予想される。

今後は観光地や地方都市への設置も増えていくとみられる。地方都市では人口減少による公共交通機関の運行縮小や、高齢者の免許返納増加などで代替インフラの必要性が高まっているため、安定感のある3輪や4輪、自転車タイプの特定小型原動機付自転車が登場することで、幅広い年齢層の利用機会増加も期待されている。

電動キックボード自体の国内保有台数は、2020年代中頃まではシェアリングサービスの発展に後押しされて増加していくとみられる。現状中国製品の輸入が主体であるが、その後は国内生産品の量産化による価格の低下も期待され、個人所有などサービス向け以外車両も増えていくと予想される。

【電動キックボードの保有台数 ※個人所有分なども含む】

2023年見込

2022年比

2035年予測

2022年比

1万5,400台

197.4%

43万台

55.1倍

●配車サービス

2023年見込

2022年比

2035年予測

2022年比

2,470億円

171.5%

8,000億円

5.6倍

スマートフォンアプリやウェブサイトを通じてタクシーを手配できるサービスを対象とする。市場は年間の乗車料金と迎車料金を含むサービスの売上金額から算出している。

タクシー業界は新型コロナの流行による人流減の影響を大きく受けたが、配車サービスは利用者の拡大期にあったため、市場は成長が続いた。人流の回復後は、タクシードライバー不足により流しのタクシーの利用が難しくなったため、配車サービスの利用が増えている。大手配車サービス事業者がプロモーションを積極的に展開し、消費者認知が広がったことも成長を後押ししており、2023年の市場は前年比70%以上の増加が見込まれる。

都市部への展開はある程度広がっており、今後は地方への展開と、これまで電話配車や流しのタクシーを利用していたユーザーに対して配車サービス利用を促すことにより、市場は拡大していくとみられる。

●キッチンカー

2023年見込

2022年比

2035年予測

2022年比

882億円

102.8%

2,058億円

2.4倍

年間でキッチンカーが利用される回数と提供商品の代金から算出している。

市場は2020年以降成長が続いている。新型コロナの影響で外食店が苦戦するなか、店舗と比較して開業費用やランニングコストを抑えられる点や、商圏が限定されないことが強みとなって参入が活発化し、2023年の市場も前年比2.8%増が見込まれる。

出店場所はイベント会場などが主であったが、近年は地域や不動産の価値向上を目的にキッチンカーを誘致するケースや、首都圏を中心にランチ難民対策としてオフィスビルへの誘致が広がっている。また出店者と出店場所のマッチングサービスの登場が追い風となっており、2035年の市場は2022年比2.4倍の2,058億円と予測される。

●自動配送ロボットサービス

2023年見込

2022年比

2035年予測

2022年比

僅少

-

200億円

-

屋外を自律走行するロボットによる配送サービスを対象とし、市場は年間の配送回数と配送料金から算出している。

2023年時点では、2030年頃の本格運用へ向けて実証実験を重ねている段階であり、サービス事業者では本格導入へ向けた課題の洗い出しやビジネスモデルの模索が続いている。郵便や宅配、フードデリバリーに参画する小売店などでの導入が予想される。

まずはフードデリバリーから活用が始まり、2030年以降は活用シーンが広がっていくとみられる、宅配便取扱個数が年々増加していることから、配送事業者でも自動配送ロボットを導入すると想定され、2035年の市場は200億円になると予測される。

◆調査結果の概要

■xMaaSの注目市場

 

2023年見込

2022年比

2035年予測

2022年比

観光MaaS

1兆8,907億円

130.2%

3兆4,532億円

2.4倍

医療MaaS

4,603億円

117.6%

6,050億円

154.6%

観光MaaSは観光を目的としたモビリティサービスや、移動のほか駅や空港での手ぶら観光サービス、レンタカーの社内端末で提供される観光情報サービスなどを対象とする。鉄道事業者などがMaaSアプリを提供し、アプリを介して観光情報やモデルコースの提案、移動のチケットやレンタカーの予約、観光施設の入場券購入、クーポンの入手などが可能である。

新型コロナウイルス感染症流行の影響から脱し、国内観光の回復や訪日外国人観光客の増加で市場は拡大していくとみられる。現在、移動手段に留まらず荷物の一時預かりや配送、備品貸出といった手ぶら観光サービスの認知拡大が促進されている。

今後MaaSアプリを介した手ぶら観光やモビリティのシェアリングサービス、観光施設などの連携が広がることで市場はさらに拡大していくと予想される。現在各公共交通機関では独自のICカードが導入され、観光施設利用料等も含めた一括決済が難しい状況であるが、往復の交通機関の料金と施設利用料をセットにしたデジタルチケットが登場することで、より自由な観光プランが提案できるため、解決が期待される。

医療MaaSは、医療機関の敷地内や医療機関への移動で利用されるモビリティサービスや、車内医療サービスを対象としている。車内医療サービスは自治体と病院が連携して、定期的な診察が必要な高齢者や妊婦を対象とした実証実験が進んでいる。

高齢化の進行によるモビリティサービス利用者数の増加で市場は拡大していくとみられる。特に地域医療では医師不足が深刻な問題となっているため、訪問診療の効率を高めるために移動診察車を活用したオンライン診療の検討が積極的に進められている。また、移動診察車を活用することにより、通院のための移動や病院での待ち時間といった患者の負担が軽減され、医療施設にとっても新規患者の獲得促進や施設の価値向上に繋がることが期待されている。

将来的には院内システムとモビリティサービスの連携による利便性向上や、車内医療サービスの拡充が期待される。また行政が主導となるため、移動診察車を介護やコミュニティバスといった複数の行政サービスを提供する場として活用していくことが予想される。

◆調査対象

xMaaS分類

・観光MaaS

・外食MaaS

・物流MaaS

・医療MaaS

・介護福祉MaaS

・EVMaaS

・小売MaaS

・子育てMaaS

・宇宙MaaS

モビリティサービス

ヒト移動

サービス

・カーシェアリング

・配車サービス

・バス

・個人間カーシェアリング

・相乗りタクシー

・航空機

・レンタカー

・オンデマンド交通

・タクシー

・シェアサイクル

・運転代行マッチングサービス

・ヘリタクシー・eVTOL

・シェアバイク

・自動運転移動サービス

・旅客船

・電動キックボードシェア

・鉄道

・宇宙旅行

モノ移動

サービス

・自動配送ロボットサービス

・貨客混載(鉄道/

・人工衛星打ち上げ・物資輸送

・ドローン配送サービス

バス/航空機/旅客船)

 

周辺サービス

・コインパーキング

・車内医療サービス

・求貨求車マッチングサービス

・駐車場シェア

・介護施設送迎支援システム

・配送見える化ソリューション

・手ぶら観光サービス

・介護施設共同送迎サービス

・移動型EV充電サービス

・車内観光情報サービス・

・キッチンカー

・EV充電サービス

車内メディア

・移動販売マッチングサービス

・軌道上サービス

インフラ機器・システム

・駐車装置・機器

・駐輪場管理システム

・自動運転運行管理システム

・駐車場管理システム

・電動車用充電器(普通/急速)

 

モビリティ

 

 

・乗用車

・自動運転シャトル

・eVTOL

・原動機付自転車/自動二輪車/バイク

・電動キックボード

 


2023/11/21
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。