PRESSRELEASE プレスリリース

第26003号

日本の成長戦略における重点投資分野として注目される
植物工場、陸上養殖の市場を調査
― 2030年国内市場予測(2024年比) ―
■人工光型植物工場 
プラント型 100億円(3.1倍) 引き合いも回復に向かい2026年以降拡大推移
ユニット型  17億円(70.0%増) 研究用や実証用、ディスプレイ用など需要は堅調

■循環式陸上養殖システム 200億円(42.9%増)
大手企業の投資・実証継続、中小規模案件引き続き旺盛

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 代表取締役 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、高市早苗首相が掲げる日本の成長戦略、食料安全保障強化策の切り札の一つで、支援策などにより今後投資が加速すると期待される植物工場、陸上養殖の国内市場を調査した。その結果を「アグリ&水産養殖ビジネスの現状と将来展望 2025」にまとめた。

この調査では、植物工場や陸上養殖をはじめ、スマート化やサスティナブルな農業や畜産業、水産業の実現に向けた注目のプラント・機器/システム・ビジネス26品目、植物工場や陸上養殖で生産される注目生産物2品目の市場を分析し、将来像を展望した。また、各業界が直面する課題・潮流4テーマ(人材不足・省力化、暑熱対策、資源循環・有効活用、害虫・疾病対策)に対する注目技術やビジネスの事例を整理した。

◆注目市場

1.人工光型植物工場

人工光型植物工場市場

太陽光を利用せず植物を栽培するプラントおよびユニットを対象とする。市場は建屋や敷地の土木・建設費を含まず、栽培システム、照明、空調機器、環境制御装置、自動化機器などの関連設備一式であり、受注ベースで算出した。

異常気象や生産者人口の減少により露地栽培やハウス栽培による野菜の供給・価格の不安定性が増す中、植物工場による野菜は、生産の安定性をはじめ、個包装による安心・安全性、洗浄不要による省力化、ロングライフ化によるフードロス削減、農薬や水の使用量削減による環境負荷低減などの点が高く評価されている。

2022年と2023年市場は、イニシャルをはじめあらゆるコストの高騰、特に、ランニングコストの三分の一を占めるといわれる電気料金が上昇したことで、新規参入を検討していた企業が計画を見直すなど、大型の新規案件も数えるほどとなりプラント型が大きく縮小したが、2024年は、大型案件の受注もありわずかながら拡大となった。ユニット型が研究向けや実証向けのほか、苗栽培向け、また、小売店や外食店などの店産店消向けやディスプレイ向けが安定していたほか、オフィスやマンション共用部などでの導入もみられた。

2025年は、プラント型の引き合いが回復に向かったが、小規模案件が中心で受注には至らない案件もあり、縮小するとみられる。ただし、年間を通じて安定的な生産が可能な植物工場に対する期待は確実に高まっており、2026年以降市場は拡大に転じると予想される。現状ではレタス類の栽培が中心となるが、将来的にはさまざまな作物に対する栽培技術の開発や、販路や売価までを見据えたビジネスモデル確立による、更なる市場拡大も期待される。

2.循環式陸上養殖システム

循環式陸上養殖システム市場

ろ過槽や水温調節機・殺菌装置などを用いて、飼育用水を浄化し循環利用するシステムを対象とする。市場は建屋や敷地の土木・建設費を含まず、飼育水槽やろ過槽、水温調節機器、殺菌装置、自動給餌システムなどの関連設備一式であり、受注ベースで算出した。

世界的なタンパク源および水産物の需要増加や水産資源の減少を背景に、海水温度の上昇や台風・赤潮といった環境変化・自然災害の影響を受けないこと、場所を選ばず安定した生産が可能であることから、持続可能な食料生産システムとして注目されている。近年は、商業目的の大規模養殖施設建設や、遊休地活用、地域活性化、SDGs目的の参入増加により、市場拡大を続けてきた。傾向としては、収益性が高い魚類との複合養殖、藻類養殖の需要が高まっている。

2024年の市場は、大規模案件がやや落ち着いたため前年比縮小となったが、公的機関での研究向けや商業化を目指した実証向けの中小規模案件が増加している。2025年以降は、大手企業の投資・実証が継続していること、中小規模案件が引き続き旺盛であること、システムを構成する設備機器の価格が上昇していることから、2030年頃まで拡大が続くとみられる。

ただし、陸上養殖はイニシャルコストに加えて電気代や飼料代といったランニングコストが非常に高いことが課題の一つとなっており、生産性の向上やコストダウンにつながる技術革新などが求められている。

◆調査結果の概要

1.注目プラント・機器/システム・ビジネス市場

注目プラント・機器/システム・ビジネス市場

農業市場では、人工光型植物工場や養液栽培プラントなどの施設/プラント/構成機器は、イニシャルコストやランニングコストの高騰などの影響で実績減少が続いているが、異常気象の常態化や生産者の減少を背景に、企業の農業参入や大規模農業法人が増加しており、植物工場や先進的な大規模施設園芸向けを中心に、今後実績回復が期待される。

栽培環境制御装置や自動操舵システムなどのスマート化関連機器/システムは、作業負担の軽減や効率化、品質の向上、生産者個人の技術・勘・経験頼みからの脱却に向けた需要により伸長が続くとみられる。

バイオスティミュラントやカーボンクレジットなどの環境配慮型資材/ビジネスは、生産者や消費者の間でも農業における環境配慮・脱炭素化やSDGsへの社会的意識が徐々に高まってきているものの、導入・採用にはまだ優先度は低く、品質や収量の向上、生産物価格への反映など、生産者の実利につながることによって、さらなる市場拡大が期待される。

畜産業市場は、小規模酪農家・畜産農家の廃業や集約化が進む中、省人化や効率化などにつながるセンシング・モニタリングシステムや経営支援システムなどのスマート畜産システムや畜産用ロボットなどのニーズが高まっている。また、環境配慮に対する意識が高まってきており、カーボンクレジットのニーズが高まりつつある。

水産業市場は、世界的な水産物需要の高まりや環境変化による水産資源の枯渇、国内では水産事業者の高齢化や担い手不足が課題となる中、水産物の生産・調達体制の再構築が求められており、持続可能な生産形態である循環式陸上養殖システムや沖合養殖システム、その構成機器が注目されている。特に、水産業では自動化/スマート化が遅れていたこともあり、スマート化関連機器への期待が高まっている。

2.注目生産物市場

注目生産物市場

人工光型植物工場産のレタス類を対象とする。市場は販売事業者(生産・販売する植物工場、植物工場産野菜を調達・販売する事業者)からの出荷ベースとする。また、植物工場を所有する外食や小売などによる自家消費や店産店消も含む。

2024年は、植物工場の増設や新規参入が限定的であったことに加え、自然災害や火災事故等により植物工場の稼働停止が散見されたことから前年に続き供給量が減少したが、販売事業者による価格改定などが進み単価が上昇したことで市場は拡大した。2025年は、植物工場の稼働再開もあり前年から供給量は増加している。また、小売や業務・加工用などでの需要の増加を背景に価格交渉力も高まっており、単価上昇から市場は引き続き拡大するとみられる。人工光型植物工場の引き合いが回復に向っており、2026年以降は植物工場の新設・増設が進むことから、2030年に向けて供給量・市場とも拡大すると予想される。

陸上養殖(循環式)産水産物は、以前はアワビやトラフグ、ヒラメ、クルマエビといった高級魚が中心であったが、近年はサケマス類や、藻類なども増えつつある。差別化のためニッチな魚種の検討も散見される。市場は陸上養殖での生産量とする。

陸上養殖は、中小規模では採算性の確保が難しく一部で撤退も見られるが、新規参入の方が上回っており、生産量は右肩上がりとなっている。2024年はアトランティックサーモンの大規模養殖が開始されたことで、生産量が大幅に増加した。2025年は、それが本格化したことで生産量が飛躍的に増加するとみられる。2026年には、サケマス類に加えてバナメイエビやウニ生産の開始や本格化、さらにはハタ類やクエなどの高級魚、海ブドウなどの藻類の養殖も増加するとみられる。以降も、大規模プラントによる養殖が計画されており、2030年頃まで生産量は増加すると予想される。

◆調査対象

農業(15品目)
施設/プラント/構成機器
・人工光型植物工場
・養液栽培プラント
・栽培用空調機器
・農業用光源(植物育成用光源・病害虫防除用光源)

スマート化関連機器/システム
・栽培環境制御装置
・灌水/給液管理装置
・栽培環境モニタリング・意思決定支援システム
・水田水管理システム
・GNSSガイダンスシステム/自動操舵システム
・ロボット農機
・除草・抑草・収穫・搬送ロボット
・農業用ドローン/ドローン活用サービス

環境配慮型資材/ビジネス
・バイオスティミュラント
・バイオ炭
・農業分野のカーボンクレジット(J-クレジット)

畜産業(4品目)
・畜産用空調機器
・スマート畜産システム
・畜産用ロボット
・畜産業分野のカーボンクレジット(J-クレジット)

水産業(7品目)
・循環式陸上養殖システム
・沖合養殖システム
・自動給餌システム
・養殖管理システム
・海洋環境予測サービス
・魚体モニタリング管理システム
・水産業分野のカーボンクレジット(Jブルークレジット)

◆注目生産物市場

・人工光型植物工場産野菜(レタス類)
・陸上養殖産水産物

◆注目技術/ビジネス事例(課題・潮流)

人材不足・省力化
・農業用・畜産用ロボット
・農業用ドローン/ドローン活用サービス
・水中・水上ドローン
・乾田直播・湛水直播
・品種改良・育種
・農業特化型生成AI
・一次産業特化型求人サイト/人材サービス

暑熱対策
・遮光剤・遮熱剤
・外張りネット
・外張りフィルム
・内張りカーテン
・循環扇
・外気導入装置
・ミスト・フォグ空調
・パッド&ファン
・ヒートポンプエアコン
・周年栽培システム(イチゴ)
・閉鎖型畜舎システム
・浮沈式生簀
・バイオスティミュラント
・飼料添加物・混合飼料
・高温耐性品種

資源循環・有効活用
・CO2回収・利用/光合成促進
・堆肥化
・下水汚泥肥料
・アクアポニックス
・代替飼料
・生分解性機能素材
・有機廃棄物/未利用有機物の資源化利用
・バイオガス発電
・リジェネラティブ農業・畜産業・水産業

害虫・疾病対策
・病害虫防除用光源
・防虫ネット
・抑草・搬送ロボット
・農業用・畜産用ドローン
・DX豚舎
・獣害対策装置
・種子加工技術
・防除支援・土壌診断サービス
・RNA農薬
・バイオスティミュラント
・品種改良・育種


2026/1/16
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