PRESSRELEASE プレスリリース

第18044号

分野・製品別に二次電池世界市場を調査
電力貯蔵システム向け二次電池市場は2030年に1兆2,585億円
−2030年予測(2017年比)−
住宅用蓄電システム2,453億円(4.0倍)PV電力の自家消費用途で拡大
非住宅用電力貯蔵システム2,125億円(7.4倍)DR・VPP用電源としての利用増加
系統用電力貯蔵システム8,006億円(8.0倍)系統安定化とPV電力など出力抑制回避で導入

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、低価格化によりリチウムイオン電池の採用が増加する、電力貯蔵・動力分野における製品別二次電池の世界市場を調査した。

その結果を「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2018 動力・電力貯蔵・家電分野編」にまとめた。この調査では、電力貯蔵分野5品目、動力分野4品目、家電分野2品目、その他蓄電デバイス採用製品8品目とそれらに採用される二次電池について、種類別に市場の現状を調査・分析し、将来を予測した。

また、自動車に関しては「次世代環境自動車分野編」、電池材料に関しては「エネルギーデバイス編」でまとめ、順次リリースする。

◆電力貯蔵分野:注目市場

電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場



住宅用蓄電システム、非住宅用電力貯蔵システム(商業・公共・産業施設など住宅以外の需要家)、系統用電力貯蔵システム(変電所や従来型発電所などの系統設置、発電事業用太陽光発電[PV]・風力発電システム併設)といった電力貯蔵システム向けの二次電池を対象とする。

再生可能エネルギーの大量導入により電力系統の運用における調整力の確保や送配電網の整備が課題となっている。課題の解決手段として電力貯蔵システムが有望視されており、系統側での周波数制御や需給調整、再生可能エネルギーの出力変動対策用途、需要家側でのピークカット/ピークシフト、デマンドレスポンス[DR]をはじめとしたエネルギーサービス用電源用途など、活用シーンが広がっている。

電力貯蔵システムの導入はさらに増加し、これにともないシステムに搭載される二次電池の市場も大幅に拡大し、2030年には2017年比6.6倍の1兆2,585億円が予測される。

1.住宅用蓄電システム向け二次電池

米国や一部のアジアなど、系統インフラが不安定な地域における、鉛電池を用いた非常用電源用途が市場の大半を占めていた。近年ではドイツ、イタリア、英国、豪州、米国の一部において、家庭向け電気料金の高騰、FIT買取価格の下落、補助制度の整備もありPV電力の自家消費用途でサイクル性能に優れたリチウムイオン電池の採用が進んでいる(2017年実績:鉛電池203億円、リチウムイオン電池413億円)。

今後もPV電力の自家消費トレンドの拡大を背景に、市場は拡大していくとみられる(2030年予測:リチウムイオン電池2,453億円)。

日本は、東日本大震災後に市場が形成された。2016年は住宅用蓄電システムを主対象とした国の購入補助制度の廃止により需要が低迷したが、2017年はシステムメーカーが効率的な販売ノウハウを構築し、それらが販売店に一層浸透したことや、ユーザーニーズに沿ったシステム開発が進められたことで市場が拡大した。2019年以降はPV余剰電力の高価買取適用終了を契機とし、自家消費トレンドの進展、DRや仮想発電所[VPP]用電源としての採用が増加し、市場拡大が期待される。

なお、外資系電池メーカーの一部には、堅調な需要が予想される案件規模の大きい自動車向けや海外の系統用電力貯蔵システム向けに材料や生産設備などの経営資源を集中させる動きもみられ、住宅用蓄電システム向けの電池供給面でのリスクになる可能性がある。

2.非住宅用電力貯蔵システム向け二次電池

米国における電力需要のピークに応じて料金が加算されるデマンドチャージ対策での導入が中心である。エンドユーザーに機器費用を負担させず、事業者が省エネ成果により費用を3〜5年程度で回収する「No Money Down」という販売方式がシステムの導入を後押ししている。

また、デマンドチャージ対策では米国のほかに豪州での導入拡大も想定され、欧州ではアンシラリーサービス市場の整備が進んでいるドイツ、英国を中心にDR・VPPといったエネルギーサービス用電源用途での導入が進められている。

日本は、東日本大震災を契機に学校、体育館、公民館など避難所になりやすい公共施設に対して、BCP用途でPVシステムと蓄電システムの導入を促す補助制度「グリーンニューディール基金」が2012年度から創設され拡大した。しかし、2016年度末に制度が実質的に終了したことで2017年に市場は大幅に縮小し、当面は横ばいが予想される。一方、産業施設向けではPVと連携させたピークカット/ピークシフトや瞬低対策、省エネ、非常用電源など様々な用途を組み合わせた提案が増加しており、今後市場をけん引する用途として期待される。

エリアを問わず、補助政策の後押しや自家消費用再生可能エネルギーシステムの負荷平準化、ピークカット用途などで拡大し、将来的にはDR・VPPといったエネルギーサービス用電源としても利用が増加し、2030年には2017年比7.4倍の2,125億円が予測される。

3.系統用電力貯蔵システム向け二次電池

市場は大規模な実証実験や再生可能エネルギーの導入案件の有無に左右されるものの、近年の再生可能エネルギーの大量導入、それにともなう系統安定化ニーズの高まりを受け電力貯蔵システムの利用が増えている。米国、ドイツや英国におけるアンシラリーサービス市場向け電源用途、米国、オーストラリアにおける大規模なPVシステム併設案件、中国「第十三次五ヶ年計画(2016〜2020年)」をはじめとする大規模な実証実験などが市場を後押しし、2017年は1,000億円の大台に乗った 。

日本は、系統設置の電力貯蔵システムは当面離島マイクログリッドを中心に導入が進み、将来的には需給調整市場における電源としての活用が期待される。PVシステム併設の電力貯蔵システムは出力抑制対策やダックカーブ問題(PV電力のピークと電力需要ピークのずれ)への対応で需要が増加しており、風力発電システム併設の電力貯蔵システムは2020年以降に複数の大型案件が予定されることから、需要増加が予想される。

再生可能エネルギーがグリッドパリティ(再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力のコストと同等かそれより安価になること)を迎えることでPVシステムや風力発電システムの導入は世界的にもさらに増加するとみられ、これにより併設される電力貯蔵システムの需要も拡大し、2030年には2017年比8.0倍の8,006億円が予測される。

◆電力貯蔵分野:調査結果の概要

電力貯蔵分野における二次電池市場は2017年に4,666億円となり、中大容量UPS向けが市場の40%市場を占める。中大容量UPSと無線基地局向けバックアップ電源で主に採用される鉛電池が市場の60%以上を占めるが、電力貯蔵システムではリチウムイオン電池が主流になっている。

中大容量UPS、無線基地局向けバックアップ電源の堅調な需要に加え、電力貯蔵システムの急速な需要増加により、それらに採用される二次電池も拡大していき、2030年には2017年比3.5倍の1兆6,497億円が予測される。中大容量UPSや無線基地局向けバックアップ電源では低コスト化によりリチウムイオン電池の採用が広がり、電力貯蔵システムでは今後もリチウムイオン電池中心の構図は変わらないものの、出力5時間超の長周期対策用途を中心にNaS電池やレドックスフロー電池などの採用増加が期待される。

1.動力分野:調査結果の概要

動力分野における二次電池市場は、2017年に8,130億円となった。フォークリフトと電動式自動二輪車向けが市場の大半を占め、採用される二次電池は鉛電池が90%近くを占める。

フォークリフト、AGV、ドローンの製品需要の増加や、フォークリフト、電動式自動二輪車、AGV向け二次電池の鉛電池からリチウムイオン電池へのシフトにより市場は拡大していき、2030年には2017年比2.0倍の1兆6,274億円が予測される。

動力分野におけるリチウムイオン電池市場は2030年に1兆円に迫り、2017年比11.9倍が予測される。一方、その他に含まれる鉛電池は6,000億円程度まで縮小が予測され、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどの採用も一部にとどまるとみられる。

2.動力分野:注目市場

フォークリフト向け二次電池の世界市場

2017年
2030年予測
市場規模
3,658億円
8,645億円

フォークリフトはエンジン式とバッテリー式に分かれるが、二次電池はバッテリー式の主要動力のほか、エンジン式でも回生電力貯蔵などアシスト動力としても使用される。フォークリフトの需要は年間130万台を超え、このうちバッテリー式は80万台程度を占める(2017年実績)。2030年にはフォークリフト全体がおよそ200万台、うちバッテリー式が150万台近くにのぼり、エンジン式はほぼ横ばいが予想される。

電池は鉛電池が主流で、コスト、実績、重量適正など様々な面で圧倒的な優位性を持つ(2017年実績:鉛電池3,606億円)。しかし2016年から相次いでリチウムイオン電池を採用したフォークリフトの投入が進んでいる。この背景としては、リチウムイオン電池の鉛電池と比較した際の特徴(長時間稼動可能、高サイクル性、メンテナンスフリー)を考慮し、メンテナンスコストを含めたトータルコストでリチウムイオン電池採用のメリットを見出す考えが広がっていることが挙げられる。

長期的にはリチウムイオン電池が鉛電池の規模を上回り、2030年には鉛電池が3,749億円、リチウムイオン電池は4,557億円が予測される。

◆調査対象品目

電力貯蔵分野 中大容量UPS、無線基地局(携帯電話)向けバックアップ電源、
電力貯蔵システム(住宅用蓄電システム、需要家設置[非住宅用電力貯蔵]、 系統設置/太陽光発電システム併設/風力発電システム併設[系統用電力貯蔵])
動力分野 フォークリフト、AGV(無人搬送車)、電動式自動二輪車、ドローン
家電分野 フィーチャーフォン/スマートフォン、ノートPC/タブレット
その他
蓄電デバイス採用製品
ウェアラブルデバイス、パワーアシストスーツ、電動アシスト自転車、電動工具、庭用掃除ロボット、高所作業車、建設機械(バッテリー式/ハイブリッド式油圧ショベル)、鉄道車両/LRV

※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。


2018/05/17
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