PRESSRELEASE プレスリリース

第20134号

エネルギーマネジメントシステム(EMS)関連の国内市場を調査
―2030年度国内市場予測(2019年度比)―
<調査結果の概要>
■EMS関連 1兆7,008億円 (53.9%増)
~ 業務効率化・自動化ニーズの高まり、BCP対策などからEMSの活用シーンが広がり、拡大 ~
<注目市場>
●HEMS(住宅向け) 86億円(32.3%増)
~ 太陽光発電システムや蓄電システムの搭載が増え、需要増加 ~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、省エネや最適制御といったエネルギー管理用途に加え、働き方改革や自然災害の多発化に伴うBCP対策の必要性の高まりといった社会情勢の変化によって活用シーンが広がっているEMS関連の国内市場を調査した。その結果を「2020 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査」にまとめた。

この調査では、EMS関連システム・サービス16品目、EMS関連機器・設備18品目に加え、IoT技術などを用いて展開されるソリューションビジネス7品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。

◆調査結果の概要

■EMS関連の国内市場

EMS市場は、短期的には新型コロナウイルス感染症による景気後退の影響を受けるとみられるが、中長期的には人手不足に伴う業務効率化・自動化ニーズの高まりやIoT・AI技術の進展、自然災害の多発化に伴うBCP対策などEMSの活用シーンは広がるとみられ、拡大が予想される。

EMS関連システム・サービスは、設備監視システム関連が、定期点検やメンテナンス管理の省力化ニーズの高まりにより伸びるとみられる。また、HEMSをはじめとするEMSは、住宅分野においてはZEHやIoT住宅、スマートマンションをキーワードとした高付加価値型住宅での需要の高まりにより、業務・産業分野においては設備管理・エネルギー管理の省力化・自動化ニーズの高まりにより、採用が増加するとみられる。

EMS関連機器・設備は、エネルギー計測ツールや監視制御機器・装置関連が、設備の遠隔監視・保守管理や見守りなど、人手不足に伴う設備管理業務の自動化・省力化ニーズの高まりによる採用増加が期待される。

◆注目市場

●HEMS(住宅向け)

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

67億円

103.1%

86億円

132.3%

HEMS(Home Energy Management System)とは、家庭内のエネルギーの見える化と、機器制御などを行うためのシステムである。創エネ設備と蓄エネ設備との組み合わせによる創蓄連携システムにおけるコントロール機能や、見守り、安心・安全、快適な環境の創造といった住環境構築システム・サービスを提供するためのプラットフォームとしての役割がある。

HEMSは、エネルギー使用の効率化を目的に普及してきたが、現在ではスマートスピーカーとの連携など、住宅×IoTの一つのツールとしての提案が増加している。今後、新築着工戸数は減少していくとみられるが、電力の自給自足に対する意識の高まりにより太陽光発電システムや蓄電システムの搭載が増えていることから、HEMSの需要も増加し、市場は拡大すると予想される。

●REMS(店舗/商業施設向け)

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

21億円

95.5%

30億円

136.4%

REMS(Retail Energy Management System)とは、店舗/商業施設における空調・照明設備などの一般的な電力負荷設備のエネルギー見える化・自動制御に加えて、冷凍冷蔵設備(冷凍冷蔵ショーケース、冷凍冷蔵庫)のエネルギー使用量や温度計測・管理など、設備管理を行うシステムである。

スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店舗チェーンを運営する大手事業者による採用が中心であったが、2018年度に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の改正で、食品スーパーが新たにベンチマーク報告の対象となったことなどから、店舗施設におけるエネルギー管理ニーズが高まり、市場は拡大してきた。

2019年度は、新規出店ペースが鈍化しているコンビニエンスストアや、ドラッグストアでの採用が伸び悩んだが、食品スーパーでの採用が堅調に推移し、市場は拡大した。

2020年度は、新型コロナウイルス感染症流行の影響により、特に既存店舗において設備投資が先送りされたことから、市場は縮小するとみられる。

今後は2020年6月の食品衛生法の改正により、食品を取り扱う施設において衛生管理が厳格化されたことで、温度管理などの設備管理における省力化ニーズがこれまで以上に高まるとみられ、市場は拡大していくと予想される。

●V2X(自動車用充放電器)

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

10億円

83.3%

375億円

31.3倍

V2X(自動車用充放電器)とは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)などの搭載蓄電池から、建物や電力系統に対して電力供給を行うためのシステムである。自動車用充放電器は採用施設に応じて、V2H(Vehicle to Home:住宅向け)、V2B(Vehicle to Building:業務施設向け)、V2G(Vehicle to Grid:電力系統供給向け)に分類されるが、それらを総称してV2X(Vehicle to X)とする。

需要は住宅向け(V2H)が中心であり、スマートハウスなどの高付加価値住宅のオプション設備や環境・防災意識の高い層向けの環境付加価値設備・非常用電源として採用されている。

2011年の東日本大震災以後、補助金制度の後押しや自動車メーカーの積極的な拡販により市場は拡大してきたが、2016年度は補助金が打ち切られ需要が急激に減少した。2017年度からは徐々に販売を増やし、2018年度は北海道胆振東部地震などの大規模自然災害が発生した影響によりBCP対策用途として需要が高まった。また、各メーカーがZEH住宅などに対するV2Hの提案に注力したことから、新築住宅で採用が増加した。

2019年度は、EVやPHVの販売が伸び悩んだものの、前年度から引き続きBCP対策用途で伸びたほか、卒FITによる太陽光発電自家消費ニーズの高まりにより、V2Hシステムの需要も増加し市場は拡大した。

2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により既築住宅や既設太陽光発電システムを保有する住宅への営業展開が一時的に滞ったことやユーザーが設備投資を敬遠していることから、市場は縮小するとみられる。

今後は、EV・PHVのさらなる普及拡大に伴い保有率が増加すれば、V2Xの導入を検討する機会が増えていくと予想される。また、現状の住宅向けだけではなく、業務・産業施設向けでも災害時に備えたBCP対策用途や太陽光発電システムの自家消費用途での導入増加が期待され、市場は拡大していくとみられる。

◆調査対象

EMS関連システム・サービス市場

・HEMS(住宅向け)

・建物設備監視システム

・顧客情報管理システム(CIS)

・MEMS(マンション/集合住宅向け)

/空調設備制御システム

・需給管理システム

・BEMS(ビル/業務施設向け)

・分散型電源監視システム

・発電プラント監視・制御システム

・REMS(店舗/商業施設向け)

・直流給電システム

・高圧一括受電サービス

・FEMS(産業施設向け)

・蓄電池制御システム

・IoT通信サービス

・CEMS

・ワイヤレス給電システム(電動自動車向け)

(キャリア/LPWA)

EMS関連機器・設備市場

・電力スマートメーター

・キュービクル式高圧受電設備

・V2X(自動車用充放電器)

・ガススマートメーター

・絶縁監視装置

・空調設備用コントローラー

・水道スマートメーター

・マルチリレー

・系統用/発電所併設蓄電システム

・見える化ツール

・需要家用蓄電システム

・変電/配電関連設備

・IoTゲートウェイ(エネルギー管理用途)

・ハイブリッドパワーコンディショナー

・エネルギーハーベスティング

・分電盤

・コージェネレーションシステム

・ドローン(エネルギーインフラ監視用途)

ソリューションビジネス

・VPP/DR/系統安定化ソリューション

・XaaS(空調/熱源関連)

・環境価値/再エネ取引関連ソリューション

・エネルギーコンサルティングソリューション

・保守管理/遠隔監視/見守りソリューション

・マイクログリッド構築ソリューション

・住宅IoTプラットフォームソリューション

 


2020/12/21
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