PRESSRELEASE プレスリリース
自動車向け二次電池市場は2030年に12.4兆円
自動車向け二次電池駆動用10.3兆円中国、欧州、北米・中南米のEV・PHV普及で拡大
補機用2.1兆円更新需要もあり20年頃までは北米・中南米がけん引
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 清口正夫 代表取締役)は、自動車や電力貯蔵システムなど、今後需要増加がおおいに期待される製品に採用される大型二次電池の世界市場を調査した。その結果を市場調査資料「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2018」にまとめた。
この調査では、「次世代環境自動車分野編」で環境対応車8品目の駆動用二次電池、自動車の補機用二次電池の、「エネルギーデバイス編」では二次電池や使用される材料の市場の現状を調査・分析し、将来を予測した。(※「電力貯蔵分野・動力分野」の詳細は5月17日に発表している)
◆注目市場
1.自動車における駆動用二次電池の世界市場
2017年 |
2030年予測 |
2017年比 |
|
市場規模 |
1兆8,571億円 |
10兆3,172億円 |
5.6倍 |
自動車における駆動用二次電池の市場は2017年で1兆8,571億円となった。中国を中心に増加するEV向けの比率が高く、2018年には1兆円を超えるとみられる。次いで1台当たりの搭載容量が大きいEVトラック・バス向けが続く。
2030年には2017年比5.6倍の10兆3,172億円が予測される。EVやPHVの普及によりEVに加えPHVの比率が高まっていくとみられる。2030年でEV向けは5.9兆円、PHV向けは2.5兆円が予測される。
エリア別には中国や北米・中南米の比率が高く、特に中国は市場の半数以上を占める。2030年は中国が4.6兆円と予測され、比率は下がるものの45%を占め、欧州は2.3兆円、北米・中南米は2.1兆円が予測され、それぞれ市場の20%程度を占める。
2.自動車における補機用二次電池の世界市場
自動車における補機用二次電池の市場は2017年で1兆5,628億円となった。内燃機関自動車(ICEV)、アイドリングストップ自動車(ISSV)向けが95%以上を占めるが、環境対応車でも補機用電池は搭載される。
ICEV/ISSV向けの最大の需要地は、新車での搭載に限れば中国であるが、バッテリーの交換などの更新需要を含めると北米・中南米となる。将来的には縮小が予想されるが、非電化地域が多い新興国や更新需要を中心に底堅い需要が予想され、2030年の市場は2017年比横ばいの1兆5,132億円が予測される。
一方で、環境対応車向けはEVなどの普及により2030年には2017年比12.2倍の6,052億円と大きく伸長し、補機用電池全体の拡大をけん引していくとみられる。
なお、電池種別ではICEV/ISSV向け、環境対応車向け問わず、鉛電池がほぼ100%を占める(2017年時点)。ISSVや12V系マイクロHVでは、ICEVと比較し容量の大きい鉛電池が採用されている。鉛電池は信頼性の高さや低価格であることから今後も補機用電池の主流であるとみられるが、鉛を有害物質として使用を規制する欧州ELV指令もあることから、リチウムイオン電池の採用が低価格化や低温始動性の改善、エンジンルームなど高温耐久性の向上などにより段階的に進むとみられる。補機用電池が鉛電池から移行することで、新たにリチウムイオン電池の大きい需要が期待できることから、新規参入も含め日系リチウムイオン電池メーカーの開発機運が高まっている。
◆調査結果の概要:大型二次電池世界市場
2017年 |
2030年予測 |
2017年比 |
|
自動車分野 |
3兆4,198億円 |
12兆4,355億円 |
3.6倍 |
電力貯蔵分野 |
4,666億円 |
1兆6,497億円 |
3.5倍 |
動力分野 |
8,130億円 |
1兆6,274億円 |
2.0倍 |
合 計 |
4兆6,995億円 |
15兆7,126億円 |
3.3倍 |
大型二次電池は自動車、電力貯蔵、動力分野で使用され、その市場は2017年で4兆6,995億円となった。各分野とも伸びが予想され、2030年には15兆7,126億円が予測される。
分野別には自動車分野の比率が高く、駆動用電池の伸びにより2017年の73%から、2030年には80%近くにのぼるとみられる。
電池種別には、自動車の補機用電池や、UPSや無線基地局、フォークリフトなど産業用機器などで安定した需要がある鉛電池の比率が高いが、将来的には、自動車の駆動用電池を中心にリチウムイオン電池の大幅な需要増加が予想される。また、リチウムイオン電池の低価格化の進行とともに現在鉛電池が中心である製品においても鉛電池からリチウムイオン電池へのシフトが進んでいくとみられる。
大型リチウムイオン電池主要材料世界市場
(正極・負極活物質、正極・負極集電体、電解液、セパレータ)
2017年の自動車向けや電力貯蔵など大型用途のリチウムイオン電池主要材料6品目の市場は9,527億円となった。2018年には1兆円突破が見込まれ、EVなどの普及によるリチウムイオン電池が需要増加により今後も拡大し、2030年には2017年比7.5倍の7兆1,390億円が予測される。
6品目の中で最も比率が高いのは正極活物質であり、次いでセパレータ、負極活物質と続く。各材料ともに、低コスト化が進んでいくとみられるが、正極・負極活物質は電池容量に直接影響する基幹材料であり、低コスト化とともに、高容量化が開発テーマとなっている。正極活物質は高容量化とともに低コスト化を目的にハイニッケル化が進んでいる。しかし、他材料と比べるとメタルの市況の影響を受けやすいことから低コスト化しにくい面もあり、今後正極活物質の比率は高まっていくとみられる。
◆調査対象
次世代環境自動車分野編 | 環境対応車駆動用蓄電デバイス | マイクロHV、HV、HVトラック/バス、PHV、EV、EVトラック/バス、FCV、マイクロEV |
補機用蓄電デバイス | 内燃機関自動車(ICEV)/アイドリングストップ自動車(ISSV)、環境対応車 | |
エネルギーデバイス編 | 大型二次電池(構成部材) | リチウムイオン電池(正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータ、正極集電体、負極集電体)、全固体電池、ニッケル水素電池(正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータ)、電気二重層キャパシタ(電極材、電解液)/リチウムイオンキャパシタ、鉛電池、NaS電池、レドックスフロー電池、次世代電池 |
※一部の数字は四捨五入しています。このため合計と一致しない場合があります。