PRESSRELEASE プレスリリース
国内における設置は自家消費型へ移行し、PPAモデルがけん引
●第三者所有モデル(PPAモデル、リース) 2,553億円(15.9倍)
~環境性と経済性の両立可能な導入形態として、新築戸建住宅で定着~
●新型・次世代太陽電池 86億円
~2035年度には太陽電池市場の5.7%を占める~
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、第三者所有モデルや自家消費型といった経済性と環境性を両立させた導入が増えている太陽光発電(PV)システムの国内市場、材料価格高騰による生産コストの上昇が企業利益を圧迫し、業界再編の加速が予想される太陽電池の世界市場を調査した。その結果を「2021年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめた。
◆注目市場
●第三者所有モデル(PPAモデル、リース)
2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
277億円 |
172.0% |
2,553億円 |
15.9倍 |
サービス事業者が顧客の所有する建物の屋根などにPVシステムを設置し、電力購入契約を結ぶ顧客へ電力を供給するPPAモデルと、定額でPVシステムを貸与するリースを対象とする。顧客は初期投資なしでPVシステムを設置でき、契約期間終了後もしくは買電量が一定に達した後は、顧客に無償譲渡される。
FIT売電と電力系統からの買電との価格差が少なくなった2017年度以降、本格的に市場が形成されている。FITによる投資型から自家消費型への過渡期における効果的な導入手法として、今後も市場拡大が続くとみられる。
電力需要に応じたシステム設計など、売電を目的に導入するPVシステムとは異なるノウハウが求められる。また、長期契約が前提であることから、顧客との継続的な関係構築などにより、将来的にVPP/DR/P2P電力取引などへの展開を想定する事業者も多い。
住宅向けは、従来PVシステムの取り扱いに慎重だった中小ビルダーでも、ユーザーの費用負担感を軽減できるPPAによる導入提案が標準化されつつある。今後はサービスの認知度向上とともに、新築戸建住宅のPV導入形態の一つとして定着し、蓄電池をセットにした展開も予想される。
非住宅向けは、自家消費が前提であり、オンサイト型の屋根設置案件が中心である。導入先としては、低圧では中小規模の商業施設や文教施設、医療・福祉施設、公共施設など、高圧以上では工場や冷凍・冷蔵倉庫などが多い。長期的には、オフサイト型の野立案件増加も期待される。
●自家消費型太陽光発電システム
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
金額 |
2,816億円 |
114.1% |
5,857億円 |
2.4倍 |
出力 |
1,260MW |
121.2% |
4,460MW |
4.3倍 |
自家消費型比率 |
20.3% |
― |
66.5% |
― |
自家消費型は、FITを活用していないPV、蓄電・蓄熱システムなどを併設するPV、第三者保有モデルにより導入されるPV、FITを活用しているが余剰電力の売電が少ないPVなどを対象とする。
FITによる売電価格の引き下げと電力料金の上昇により、FITを活用したPVシステムの導入から自家消費を目的とした導入へ移行しつつある。PVシステムにおける自家消費型の比率は年々上昇しており、2035年度には66.5%が予測される。
住宅向けは、PVと蓄電・蓄熱システムのセット導入が増えており、その中でも蓄電池の導入率が50%程度まで高まっている。特に新築戸建住宅では蓄電・自家消費を前提とした自家消費型が標準化しつつある。現状では、余剰電力を売電する方が経済的メリットを得やすいが、長期的にはFITによる余剰電力買取制度の廃止も想定されるため、2035年度には自家消費型比率が100%になるとみられる。
非住宅向けは、環境価値へのニーズの高まりや電力料金の上昇などから導入が進んでおり、PPAの活用も増えている。現在は全量自家消費が基本であり、電力需要の少ない時期に合わせたシステム設計となるため、PVシステムの設置可能面積を十分に活用できていないケースも多い。今後は、2022年度開始予定のFIP(Feed-in Premium)を活用した売電や、自己託送による電力融通など、余剰電力の活用が増えていくとみられる。
◆調査結果の概要
■太陽電池の国内市場(年度:4月~3月)
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
|
金額 |
2,819億円 |
107.9% |
1,509億円 |
57.7% |
|
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新型・次世代 |
僅少 |
― |
86億円 |
― |
出力 |
6,750MW |
96.4% |
7,260MW |
103.7% |
※新型・次世代は内数
太陽電池モジュールを対象とする。この内、新型・次世代太陽電池は、色素増感、有機薄膜、ペロブスカイト、GaAsを対象とする。
2020年度は、上半期に新型コロナウイルス感染症の影響で大きく減少し、下半期には住宅向けが回復に向かったものの、材料価格高騰による非住宅向けでの導入先延ばしなどがみられ、市場が縮小した。
2021年度は、材料価格高騰に伴う値上げにより金額ベースで拡大し、前年度比7.9%増が見込まれる。しかし、2022年度以降は非住宅用のFIT案件の受注残と新規需要獲得の減少により、縮小が続くとみられる。
中長期的には、世界的な生産拡大に伴う低価格化に加え、電力料金の上昇とカーボンニュートラル対応ニーズの高まりを背景として、2030年度頃に縮小は下げ止まり、市場は拡大に向かうとみられる。
なお、太陽電池をセルから製造・開発する国内メーカーはほとんどおらず、海外から安価なセルを調達してモジュールに組み立てるか、モジュールのOEM供給を受けるメーカーが中心である。今後は日本の住宅事情に合わせたハウスメーカーとの共同開発なども徐々に減っていき、海外メーカーのシェアが増加するとみられる。
新型・次世代太陽電池は、色素増感が商用化されているが、IoTセンサー電源やビーコンなどで使用され、デバイス1個あたりの搭載容量が非常に小さく、実績は僅少である。有機薄膜、ペロブスカイト、GaAsは、まだ商用化されていないが、有機薄膜は海外では市場が形成されている。ペロブスカイトは商用化まで時間を要するものの、結晶シリコンでの設置が難しい場所での採用により一定の市場を形成すると期待される。GaAsは車載用太陽電池としてEV向けで導入が期待される。新型・次世代太陽電池の2035年度の市場は86億円が予測され、太陽電池市場の5.7%を占めるとみられる。
■太陽電池の世界市場(年次:1月~12月)
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2021年見込 |
2020年比 |
2035年予測 |
2020年比 |
金額 |
10兆3,489億円 |
2.1倍 |
10兆1,661億円 |
2.1倍 |
出力 |
260.8GW |
144.8% |
487.3GW |
2.7倍 |
世界的な地球温暖化に対する関心の高まりや、各国による再生可能エネルギーの導入率を高める政策が後押しとなり、市場は拡大を続けている。なお、2020年は新型コロナ流行の影響により、太陽電池の生産に必要な原材料や機器の供給を停止する国もみられた。
2021年は、出力ベースでは前年比44.8%増が見込まれる。金額ベースでは、ガラスやポリシリコンといった材料価格や輸送費の高騰などにより太陽電池の出荷価格が上昇していることから、市場は10兆円超えが見込まれる。しかし、生産コストの上昇を出荷価格に転嫁しきれない企業が多く、各社の利益が大きく圧迫されており、業界再編が加速するとみられる。
今後もカーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電システムの設置が進み、2035年は出力ベースで500GW近くまで伸びると予測される。一方、金額ベースでは材料価格高騰の落ち着きと、太陽電池の生産規模拡大に伴う生産コストの低下により、2035年には10兆1,661億円が予測される。
◆調査対象
国内市場 |
太陽電池・周辺機器 |
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・太陽電池 |
・新型・次世代太陽電池 |
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・パワーコンディショナー |
・架台 |
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・遠隔監視システム |
・蓄電システム |
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太陽光発電システム |
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・住宅用太陽光発電システム |
・非住宅用太陽光発電システム |
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設置形態別・アプリケーション |
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・第三者所有モデル(PPAモデル、リース) |
・建材一体型太陽電池(BIPV) |
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・営農型(ソーラーシェアリング) |
・移動体用太陽電池 |
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・ソーラーカーポート |
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ストック向け注目ビジネス |
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・O&Mサービス |
・リサイクル・リユース・適正処理 |
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世界市場 |
太陽電池 |
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・結晶シリコン系(単結晶、多結晶) |
・薄膜系(CIS/CIGS、CdTe、その他) |
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・高付加価値・特殊型太陽電池 |
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N型結晶シリコン太陽電池 |
フレキシブル太陽電池 |
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ダブルガラス太陽電池 |
建材一体型太陽電池(BIPV) |
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両面発電型太陽電池 |
電子機器組込型太陽電池(EIPV)など |
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インゴット/ウエハー製造 |
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・シリコンインゴット/ウエハー |
・ダイヤモンドワイヤー |
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・炭素材料 |
・製造装置(ワイヤーソーなど) |
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セル/モジュール部材 |
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・バックシート |
・電極ペースト(銀ペースト) |
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・封止材 |
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