PRESSRELEASE プレスリリース

第22135号

次世代物流システム・サービス市場を調査
―2030年予測(2021年比)―
●物流向けドローン日本市場 12億円 (6.0倍)
2022年12月よりレベル4飛行が可能に。実証実験やサービス提供が増えていき、拡大
●バース管理システム日本市場 50億円 (3.6倍)
2024年問題の解決手段の一つとして、導入が進む

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、人手不足対策や労働環境の改善のため、DXが進められている次世代物流システム・サービス市場を調査した。その結果を「2023年版 次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望」にまとめた。

この調査ではロボティクス・オートメーション9品目、ロジスティクス・ファシリティ8品目、ラストワンマイル6品目、IoT(ハードウェア・ソリューション)5品目、IoT(ソフトウェア・ソリューション)5品目、サービス5品目、計38品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。なお、市場は日本市場+日系メーカーの海外売上を基準とした。

◆調査結果の概要

■次世代物流システム・サービス市場【日本市場+日系メーカー海外売上】

 

2022年見込

2021年比

2030年予測

2021年比

ロボティクス・オートメーション

475億円

116.1%

1,441億円

3.5倍

ロジスティクス・ファシリティ

3,027億円

106.3%

4,233億円

148.7%

ラストワンマイル

220億円

106.8%

436億円

2.1倍

IoT(ハードウェア・ソリューション)

311億円

104.7%

568億円

191.2%

IoT(ソフトウェア・ソリューション)

292億円

105.4%

513億円

185.2%

サービス

2,790億円

107.7%

4,641億円

179.1%

合 計

7,114億円

107.4%

1兆1,831億円

178.6%

※市場データは四捨五入している

2021年は省人化、業務効率化を目的とした設備投資が増えたことで、自動化・デジタル化を促進するロボティクス・オートメーションや、ラストワンマイルを実現する機器・システムの導入が進み、市場が拡大した。半導体不足を契機とした部材不足の影響がハードウェアを中心にみられるが、2022年は、EC需要の増大による物量の増加や、複雑なオペレーションへの対応を背景に、人手不足解消、業務効率化を目的として、ロボティクスやAI、IoTなど先端技術を活用した機器・システムの導入が進み、市場は前年比7.4%増の7,114億円が見込まれる。

働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制などの物流業界への適用が2024年4月に迫っていることから、トラックドライバーの人手不足など「2024年問題」への対応が一つのキーワードとなっている。ドライバーの労働環境の整備と人材確保のための取り組み、新たな輸送スキームの構築などが進められており、その中で「物流DX」のニーズが増加し、ビジネスチャンスが広がっている。物流DXは、機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでの在り方を変革することと定義づけられており、トラックドライバーの人手不足や長時間労働を解決するため、荷待ち時間の短縮やトラックの稼働率の向上、配送・庫内作業の効率化などを目的に、ロボティクスやAI、IoTといった先端技術を活用した自動化・デジタル化の取り組みが一層加速するとみられる。

物流DXを実現するためには、単一ソリューションによる解決ではなく、複数製品を組み合わせたトータルソリューションが重要となる。近年では、欧州や中国のロボット・マテハン企業が日本市場へ参入しており、海外製品の取り扱いも多くなっている。アライアンスや協業により、個別対応から複合的なソリューション展開やRaaS(Robot as a Service)などのサービス提供が進み、2030年には2021年比78.6%増の1兆1,831億円が予測される。

【カテゴリー別市場】

ロボティクス・オートメーションは、人手不足の解消を目的とした省人化、自動化の加速により、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)などと連携した自動化ソリューションが展開され、市場拡大が予想される。市場黎明期の品目が多く、利便性や認知度の高まりによる伸びが予想されるほか、RaaS(Robot as a Service)による提供が増えることで販路の広がりが期待される。品目別には、AGV・アーム付きAGVが市場をけん引していき、このほか、次世代物流ロボットシステムや棚搬送AGVなども大きな伸びが期待される。

ロジスティックス・ファシリティは、ロボットなどほかの機器との組み合わせたトータルソリューションの中の1アイテムとして導入が進み、市場拡大が予想される。

ラストワンマイルは、宅配ボックスのウエイトが高い。無人宅配・配送ロボットや物流向けドローンは実証実験から導入へ段階が進んでおり、配送業務の効率化、省人化を目的に導入が進み、市場の拡大が予想される。

IoT(ハードウェア・ソリューション)は、アナログ対応での運用が多い物流現場の情報をデータ化するための機器として需要が増加し、データの利活用が進んでいくことで、スマートグラスや物流向け音声認識エンジン、AI画像認識活用物流システムなどの伸びが期待される。

IoT(ソフトウェア・ソリューション)は、WMS(倉庫管理システム)のウエイトが高い。今後はWMS(倉庫管理システム)に加え、配送見える化ソリューションやバース管理システムが可視化や効率化を行う業務支援ツールとして需要が増加するとみられる。

サービスは、求貨求車マッチングサービスや通販フルフィルメントサービスのウエイトが高い。今後は、人材不足の対応や労働環境の改善など、物流現場の課題解決につながる新しい物流スキームの構築に向けて新たなサービスに対する需要が高まり、RaaS(Robot as a Service)や倉庫シェアリングなども増えていくとみられる。

◆注目市場

●物流向けドローン【日本市場+日系メーカー海外売上】

 

2022年見込

2021年比

2030年予測

2021年比

全体

4億円

2.0倍

12億円

6.0倍

 

日本市場

4億円

2.0倍

12億円

6.0倍

配送業務に携わるドローンを対象とした。これまで目視できる範囲での飛行、離島や中山間部など無人地帯での目視外飛行は可能であったが、2022年12月から、有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が一部可能となり、市場の転換期を迎えた。

機体登録義務化やライセンス認証など制度も整い始めており、レベル4飛行の実証実験や配送サービスを開始する企業や自治体が増えると予想される。離島や中山間部などでは、配送効率化や買い物支援などの課題を解決する手段として期待され、特に医薬品やワクチンなどの輸送を中心に進んでいくとみられる。

●バース管理システム【日本市場+日系メーカー海外売上】

 

2022年見込

2021年比

2030年予測

2021年比

全体

17億円

121.4%

50億円

3.6倍

 

日本市場

17億円

121.4%

50億円

3.6倍

トラックの予約・受付、車両誘導、車両入退管理などの機能を有するソフトウェアを対象とした。

トラックドライバーの車両待機の回避や入出荷作業の効率化が期待され、トラックドライバーの労働環境の改善や人手不足の解消へ繋がることから、2024年問題の解決手段の一つとして、導入が進んでいる。

2021年は一部大型の設備投資案件の抑制や延期があり微増にとどまったものの、2022年から駆け込み需要が期待される。2024年以降は、伸びが落ち着くとみられるが、バース管理システムと庫内業務やゲートシステムなど庫外のシステムを連携させたソリューション提案に加え、初期費用を抑えたパッケージ製品の普及によって、中小企業で導入が進み、市場は拡大を続けると予想される。

●AMR(協働型ピッキング支援ロボット)【日本市場+日系メーカー海外売上】

 

2022年見込

2021年比

2030年予測

2021年比

全体

10億円

166.7%

120億円

20.0倍

 

日本市場

10億円

166.7%

108億円

18.0倍

人と協働しながら物流倉庫内のピッキング工程を行う自律走行搬送ロボットを対象とした。人が商品を保管棚から取り出しロボットの上に載せ、ロボットが自動で搬送する。

2020年に日本市場が立ち上がり、EC事業者や卸・小売業者で徐々に導入が増えている。EC関連の物流倉庫では商品の入れ替えやオーダー変更が随時行われ、自動化が難しいことから、協働型が適している。省人化を目的とした導入が多いが、協働型にしたことで搬送のための歩行数が減少し作業負担が軽減されて、高齢者の採用が可能となったという事例が出ている。

今後は、労働環境の改善という観点からも導入が進んでいき、市場は拡大が予想される。また、レイアウト変更や需要変動にも柔軟に対応できることから、RaaS(Robot as a Service)の活用が増えていくとみられる。

◆調査対象

ロボティクス・オートメーション

 

 

・AGV・アーム付AGV

・ACR

・次世代物流ロボットシステム

・AMR

(自動ケースハンドリングロボット)

・物流向けアシストスーツ

(協働型ピッキング支援ロボット)

・ソーティングロボットシステム

・AGV用ワイヤレス給電システム

・棚搬送AGV

・AGF(無人フォークリフト)

 

ロジスティクス・ファシリティ

 

 

・デジタルピッキングシステム

・回転棚

・ラベルプリンター

・自動搬送・仕分けシステム

・電動式移動棚

・自動梱包システム

・立体自動倉庫システム

・垂直搬送機

 

ラストワンマイル

 

 

・宅配ボックス(戸建住宅向け)

・AI再配達回避ソリューション

・超小型モビリティ

・宅配ボックス

・物流向けドローン

 

(集合住宅、公共スペース向け)

・無人宅配・配送ロボット

 

IoT(ハードウェア・ソリューション)

・スマートグラス

・自動運転トラック

・AI画像認識活用物流システム

・ハンディターミナル

・物流向け音声認識エンジン

 

IoT(ソフトウェア・ソリューション)

・WMS(倉庫管理システム)

・バース管理システム

・倉庫内作業可視化システム

・物流向けシミュレーションソフト

・配送見える化ソリューション

 

サービス

 

 

・RaaS(Robot as a Service)

・倉庫シェアリング

・パレットレンタルサービス

・通販フルフィルメントサービス

・求貨求車マッチングサービス

 


2022/12/20
上記の内容は弊社独自調査の結果に基づきます。 また、内容は予告なく変更される場合があります。 上記レポートのご購入および内容に関するご質問はお問い合わせフォームをご利用ください、 報道関係者の方は富士経済グループ本社 広報部(TEL 03-3241-3473)までご連絡をお願いいたします。