PRESSRELEASE プレスリリース
●MicroLED 9,600億円(369.2倍)
TVやLEDディスプレイなどに加え、ウェアラブルデバイスでの採用に期待
●RF(高周波)半導体 2兆7,216億円(87.2%増)
2028年頃から6G通信のインフラ投資が進み、市場拡大に寄与
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋 社長 田中 一志 03-3241-3490)は、スイッチングスピードの速さや高い耐圧性などの特性により、シリコン半導体よりも搭載機器の性能アップ、低消費電力、エネルギーロス低減などが可能なことから採用が活発化している化合物半導体の世界市場を調査した。その結果を「2025 化合物半導体関連市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では、光半導体、RF半導体、パワー半導体といった化合物半導体、その関連部材、採用するアプリケーションの市場や製品トレンドなどを整理した。なお、シリコン系の先端半導体については「2025 先端/注目半導体関連市場の現状と将来展望 市場編」でまとめており、その結果は今後発表する。
◆注目市場
●MiniLED・MicroLED
MiniLEDは、ミニからファインピッチまでの微小チップを採用した製品を対象とした。バックライトユニットやLEDディスプレイが主な用途である。
バックライトユニット向けは、LEDパッケージメーカーがすでにPOBを製品化・量産化しており、激しい価格競争が行われている。TVやPCモニターなどで採用増加による需要拡大が期待されるものの、単価の下落により伸びは鈍化するとみられ、メーカーは車載ディスプレイ向け(曲面などを含む)など、より高付加価値な分野に注力している。
LEDディスプレイ向けは、2023年にコントロールセンターパネルやシアターモニター、会議室モニター、商業施設などでのインフォメーションモニター、XRスタジオなど、屋内向けが堅調だったほか、中国における高精細LEDディスプレイに対する省・市政府の補助金政策などから、市場が拡大した。2024年以降も堅調な拡大が予想される。
MicroLEDは、チップサイズが一辺50μm以下、もしくは両辺が100μm以下の、ベース基板が剥離された製品を対象とした。
市場は限定的であるものの、TVやLEDディスプレイなど大型ディスプレイで採用される。本格的な普及に向けて、製造プロセスの改善やデバイス・モジュール設計の見直し、メンテナンス面での工夫など、解決すべき課題はある。しかし、中国ではLEDメーカーとディスプレイメーカーの共同開発・提携、政府による公的補助や市場促進政策を背景とした旺盛な開発・生産投資によって価格が大幅に下落しており、コスト面の課題は解消されつつある。
将来的には、TVやLEDディスプレイなどに加え、ウェアラブルデバイスでの採用が期待される。特に、スマートグラスは光効率や輝度の観点からMicroLEDが本命とされており、採用増加が市場拡大に寄与するとみられる。
●RF半導体
ワイヤレス通信機器には欠かせない、高周波半導体である。市場をけん引しているのは、スマートフォンをはじめとしたモバイル機器向けPA(パワーアンプ)に搭載されるGaAs(ヒ化ガリウム)RF半導体である。今後はスマートフォンの中でもPAの搭載員数が多い5G対応端末の普及に伴い、市場は拡大していくとみられる。
高い伸びが予想されるGaN on SiC RF半導体は、基地局のアンテナとRFが一体化したMassive MIMOに搭載されるGaN PAモジュールに採用されている。2024年時点ではアンテナ1本につき32個のPAモジュールが搭載されたタイプが中心だが、長期的には64個以上のPAモジュールを搭載したアンテナが増えるとみられ、需要増加が期待される。一方で、一部参入メーカーでは製品のコストダウンを目的としたセラミックパッケージから樹脂パッケージへの移行を検討しており、単価の低下が予想されることから、市場の伸びは緩やかになるとみられる。
2028年頃から6G通信のインフラ投資が進むとみられる。特に、基地局に使用される半導体はシリコン系から化合物系へと移行しており、投資増加がRF半導体の拡大に寄与するとみられる。なお、6G通信では100GHz・100W以上の周波数帯の採用が検討されており、新たにInP(リン化インジウム)RF半導体が注目されている。次世代の高周波対応デバイスの採用により、6G基地局での出力増大、低消費電力化などが期待されている。
●ダイヤモンド基板
ダイヤモンド半導体の基板を対象とした。ダイヤモンド半導体は熱伝導率や絶縁耐性に優れており、Beyond 5Gや、通信衛星、耐放射線デバイス、量子分野への応用が期待される。
現在研究開発段階であり、日本では研究機関からのスタートアップやNEDOによるベンチャー企業への投資などが行われており、世界に先行して開発が進んでいる。今後もさらに開発が活発化し、商用化が進むのは2026年以降とみられる。
最も開発が進んでいる用途は放射線センサーであり、注目用途は、データセンターが挙げられる。データセンターでは空冷や水冷などの冷却方式が採用されているが、ダイヤモンドはGaNやSiCよりも耐熱性や放熱性に優れていることから、冷却方式に依存しない新たな熱対策の検討を目的として、注目するメーカーが増えていくとみられる。
◆調査結果の概要
■化合物半導体の世界市場
2024年の市場は、パワー半導体などでEV関連の需要が落ち着いているものの、AIやデータセンターへの設備投資が増加し、化合物半導体を採用する動きも活発になっていることから、前年比で10%以上伸長するとみられる。RF半導体とLEDチップの規模が大きく、RF半導体は、2028年以降6Gに向けた投資が徐々に活発化していき、堅調に伸びるとみられる。一方、LEDチップは需要が成熟しつつあることから徐々に縮小すると予想される。
今後の伸びが期待されるのは、MiniLED・MicroLEDとパワー半導体である。次世代ディスプレイとして注目されるMiniLED・MicroLEDはXRやLEDディスプレイ、自動車向けなど採用機器の増加による伸長が期待される。また、パワー半導体はSiC on SiCが拡大をけん引していき、自動車で採用が進むことで、車載専用の特殊モジュールでの展開も増えるとみられる。
■化合物半導体関連部材の世界市場
化合物半導体の需要増加によって堅調な市場拡大が予想される。
基板市場において規模が大きいのはSiC基板であるが、EVの需要鈍化と激しい価格競争による単価下落のため、伸びが鈍化している。しかし、2024年はGaAs基板、GaN基板の伸びにより市場は前年比で二桁近い伸びが予想される。また、今後はSiC基板に加え、GaAs基板のPA需要の高まり、VCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)のセンサー用途や通信用途での需要増加により拡大していくとみられる。
なお、素材を問わず、基板の大口径化が図られている。特に、AlN(窒化アルミニウム)、ダイヤモンド、Ga₂O₃(酸化ガリウム)、GeO₂(二酸化ゲルマニウム)などでは、物性としては理論上SiCやGaNを上回るとされるものの、量産化やコスト面などから需要が大きい分野での採用は少ない。そのため、大口径化による量産化と価格低下の進展、これまでのSiCやGaN基板のスペックに寄らないアプリケーション開発が進むことで、市場拡大が期待される。
そのほか、放熱部材や実装部材などが含まれる。半導体チップの性能向上により、電気消費量が上がるため、熱対策の一環として放熱部材が伸びるとみられる。特に、SiCパワー半導体はシリコン系と比べ放熱性能は高いものの、高温での動作が可能といった特徴を活かすため、放熱性能の要求が更に高まっており、シンタリングペーストやSi₃N₄(窒化ケイ素)基板などが伸びている。
◆調査対象
<化合物半導体>パワー半導体
・GaN on GaNパワー
・GaN on Siパワー
・GaN on サファイアパワー
・SiC on SiCパワー
・その他次世代系パワー(Ga₂O₃、GeO₂、ダイヤモンド)
RF半導体
・GaAs RF
・GaN on SiC RF
・GaN on Si RF
・その他次世代系RF(InP、Ga₂O₃、ダイヤモンド)
LEDパッケージ
・赤外光LEDパッケージ
・紫外光LEDパッケージ
LEDチップ
・GaN系LEDチップ
・GaAs・GaP系LEDチップ
・赤外光LEDチップ
・紫外光LEDチップ
MiniLED・MicroLED
・MiniLED
・MicroLED
LD
・VCSEL・PCSEL
・DFB/CW+SiPh/ITLA/IC-TROSA
・ファブリペロー/QD LD/励起レーザー
その他光デバイス
・化合物エリアイメージセンサー
・PD・APD
<関連部材>
基板
・GaAs基板
・GaN on Others基板
・GaN基板
・InP基板
・SiC基板
・AlN基板
・ダイヤモンド基板
・Ga₂O₃基板
・GeO₂基板
その他部材
・放熱基板(AlN)
・放熱基板(Si₃N₄)
・放熱基板(Al₂O₃)
・放熱基板(メタル)
・シンタリングペースト
・放熱ギャップフィラー
・放熱シート
・厚銅基板
・セラミックパッケージ
・ボンディングワイヤ
・DIP+はんだ/プレスフィット/バスバー
<アプリケーション>
・データセンター
・基地局
・自動車
・モバイル機器